2022 Fiscal Year Annual Research Report
側生器官原基の形成周期と生長相転換にともなう変調
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
22H04729
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
木下 温子 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (00612079)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 茎頂メリステム / 器官形成 / 幹細胞 / 葉序 |
Outline of Annual Research Achievements |
茎頂および根端メリステムの活動に起因する胚発生後の形態形成は、陸上植物に特徴的な発生様式であり,中でも周期的に新たな器官を生産する茎頂メリステムは、地上部に形成される器官の形態的多様性もたらす重要な機能を担っている。これまでの解析により,茎頂メリステムの恒常性は複数のシグナルを介したフィードバック機構により保たれることが示されている。一方で,栄養生長期から生殖成長期への転換期には、茎頂メリステムのサイズが顕著に増大するドーミングという現象が知られており,その恒常性の維持機構に一時的な変調がもたらされることが示唆されている。 葉序は、植物が茎の周りに描く葉の配列様式のことをいい、植物ごとにそれぞれ固有の葉序パターンを持っている。これらの葉序を決定づける要素の1つとして、理論研究からメリステムサイズが知られている。実際に,メリステムサイズが大きな個体では、オーキシン輸送による葉原基の位置制御に乱れが生じ、正常な葉序から逸脱する例も報告されている。しかしながら,成長相転換にともなうドーミングが葉序に及ぼす影響については,これまでにほとんど分子的な知見が得られていない。茎頂メリステムからの器官形成における周期は、どのようにして堅牢性を保持しているのか。またその変調はどのような分子メカニズムにより誘発されるのか。植物の地上部形態の多様性をもたらす周期パターンの謎にせまるため,生長相転換過程における茎頂メリステムの形態およびマーカー遺伝子の発現を定量的に追跡することにより,器官形成における周期性およびその変調に関わる分子メカニズムの解明することを目的とした解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、メリステムから表出する原基の表出パターンと内的振動をもたらす植物ホルモン動態を解析するための基盤を整備した。まず,植物育成用インキュベーターを新規に購入し,既存の機器と合わせて2台のインキュベーターを確保した。これにより,日長変化により花成を任意にコントロールすることが可能になった。また,画像解析用にコンピューターを購入し,レポーターラインの発現パターンを定量的に解析するソフトウェアを導入した。 (1)成長相転換に伴うメリステムサイズの変化が葉序に及ぼす影響 成長相転換にともなうメリステムサイズ増大が葉序に影響を与える可能性を検証するため、シロイヌナズナの野生型Col-0およびLer系統を用いて経時的に葉序を計測した。その結果、いずれの系統においても成長相を通じて葉序の連続性が保持されていることが示された。一方で、発芽直後からメリステムサイズが増大する表現型を示すclv1、clv2変異体では、一定の割合で葉序に乱れが生じる個体が見られた。しかしながら、これらの個体の葉序の乱れ方には、成長相の転換との明らかな関連は見られなかった。 (2)シロイヌナズナ茎頂メリステムにおけるオーキシン応答レポーターマーカーの発現パターン解析 植物の茎頂メリステムにおけるオーキシン局在は,器官の形成位置の決定に重要な役割を担うことが知られている。そこで,オーキシンの応答レポーターマーカーであるDR5rev::3xVENUSの発現パターンを時系列的に解析した。その結果,DR5rev::3xVENUSの発現パターンは発生ステージによらず一定であり,花成の影響を受けないことが示唆された。以上の結果より、成長相転換によるメリステムサイズの増大は葉序に影響を及ぼさず、成長相を通じて葉序パターンが頑健に保持されるメカニズムが存在する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は下記の計画にしたがって研究を進める。 (1)生長相転換期の茎頂メリステムにおけるレポーターラインの発現解析 令和4年度に観察したオーキシンレポーターラインの発現パターンに加え,サイトカイニンおよびジベレリンの応答や生合成関連遺伝子の発現パターンを検証する。また,これまでに入手した各種レポーターラインの発現パターンを花成誘導の時系列に沿って詳細に解析する。この際、取得した画像データを3D/4D画像解析ソフトウエアMorphoGraphXを用いて処理し、細胞サイズや曲率とともにレポーター遺伝子の発現レベルを定量化する。これにより、茎頂メリステムの周縁部から表出する器官原基の発生ステージを客観的な指標で規定することができ、レポーター遺伝子の発現部位との位置関係も明らかにすることができると考えられる。 (2)花成誘導過程のメリステムのライブイメージング技術の開発 茎頂メリステムのライブイメージングは主に生殖成長期の花序メリステムが用いられ、栄養成長期や転換期のメリステムについてはほとんど実用例がない。その理由として、栄養成長期のメリステムは茎葉に覆われ露出が難しいこと、メリステムの単離により花成に必要なシグナルが供給されないことなどが挙げられる。そこで、今年度は花成誘導によるメリステムの変化を経時的に観察するため、栄養成長期および転換期におけるメリステムのライブイメージング系を確立する。単離したメリステムを適切な無機塩類や植物ホルモンを含む培地上で培養し、花成誘導に至る条件を探索する。培養条件が確立された場合、共焦点レーザー顕微鏡を用いたライブイメージングの条件検討を行う。
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Research Products
(4 results)