2022 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic oscillatory pattern of calcium signals and regulation of plant morphogenesis
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
22H04734
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50211884)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゼニゴケ / カルシウムイオン / 活性酸素種 / 極性先端成長 / 仮根 / 長距離シグナル伝達 / 周期的振動 / ROS生成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼニゴケの細胞質Ca2+濃度の時空間変化を、生理的状態を保ちながら個体全体から細胞内まで可視化解析する手法を確立し、①極性先端成長する仮根先端部においてCa2+濃度が周期的に振動し、その変調と伸長速度が相関すること、②無性芽~葉状体の発生過程を通して分裂組織の個々の細胞内のCa2+濃度が細胞の位置毎に異なる周期で自発的に変動し、細胞内・細胞間を伝播すること、③維管束系を持たないにもかかわらず、接触・傷等の多様な刺激により、Ca2+・ROS・電気シグナルが約1.2 mm/sの速度で長距離伝播し、遠位の分裂組織のCa2+・ROS濃度が急激かつ一過的に上昇することを見出した。 Ca2+・ROS・電気シグナルの相互関係を詳細に解析し、④ROS生成酵素Rboh は2箇所のSer残基のリン酸化によりCa2+の結合親和性が高まり、Ca2+結合により活性化されること、⑤仮根の極性先端成長にはCa2+依存性プロテインキナーゼCPK5によるMpRbohBの活性化を介したROS生成が必要なこと、⑥刺激誘導性ROSシグナルはMpRbohBが担うが、Ca2+・電気シグナル伝播には必要ないことなどを見出した。 仮根の極性先端成長の定量解析系を構築し、⑦仮根伸長が負の屈光性により制御されることを発見した。Ca2+濃度変化に関与する因子の同定を目指して、変異体を系統的に作出し、表現型の解析を進めると共に、遺伝子破壊系統の順遺伝学的スクリーニングを進めた。③が抑制される変異体を見出し、原因遺伝子の同定と機能解析を進めている。 全てのRbohを破壊した全生物界で初の例となるMprbohA/BKOが細胞分裂・分化に重篤な表現型を示すことを見出し、Ca2+・ROSシグナルの下流で機能する標的因子の解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イメージング実験系の構築と現象論の解析は順調に進展している。領域内外で多くのモデル化、シミュレーションの専門家と議論を進め、こうしたい分野共同研究も開始している。遺伝学的解析と変異体の表現型の解析は、一部で研究が当初の予想以上に難航した部分もあったが、進展しており、次年度の成果が期待される。試行錯誤を繰り返しながら、ゼニゴケ仮根の極性先端成長の定量的解析実験系を構築した結果、仮根の負の屈光性という新規の現象を発見すると共に、領域内の共同研究を開始するという、当初予期しなかった進展もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
極性伸長成長する仮根先端部におけるCa2+濃度の勾配・周期的変動と伸長速度との相関関係を詳細に解析し、その生理的意義を探る。またCa2+濃度の周期的変動に影響を与える変異体の同定を進め、周期的変動の分子メカニズムの解明を進める。湾入部の分裂組織における細胞質Ca2+濃度の周期的変化を細胞毎に詳細に解析し、その生物学的意義や細胞の分裂・分化との関連を解析する。またRbohにより積極的に生成されるROSの先端成長・細胞分裂/分化における標的分子や生理的意義を解析する。種々の刺激により誘導されるCa2+・ROS・電気シグナルの迅速な長距離伝播の分子メカニズムや生理的意義の解明を進めると共に、細胞固有のCa2+濃度の周期的変動と、刺激により誘導され長距離伝播されるシグナルとの相互作用を解析する。領域内の共同研究により、こうした過程のモデル化・シミュレーションやCa2+シグナルの下流で発生・形態形成制御に関与する因子の同定を進めたい。
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Research Products
(38 results)