2022 Fiscal Year Annual Research Report
二元機能性青色光受容タンパク質の光応答機構
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
22H04751
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山元 淳平 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (90571084)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 時分割構造解析 / シグナル伝達 / DNA修復 / 機能分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNA修復を担う光回復酵素と概日リズム形成に関与するクリプトクロムの機能を単一の酵素で成し遂げる二元機能性動物類縁型クリプトクロムに注目し、その光応答分子機構を明らかにすることを目的に研究を行なった。 クラミドモナス由来クリプトクロム(CraCRY)の微結晶を用いた時分割シリアルフェムト秒X線結晶構造解析(TR-SFX)による光依存的シグナル伝達機構を明らかにするべく、X線自由電子レーザー施設SACLAにて研究を実施した。その結果、光励起から10 nsの段階で一部のアミノ酸に動きが見られ、100 ns後にはC末端の塩橋の切断が引き起こされた。その後ミリ秒の時間領域まで単調にC末端構造が変化することがわかった。このC末端の動きが重要であることが近年の別グループの論文で示されており、その分子機構を明らかにすることに成功した。そのほか、数マイクロ秒程度で構造変化するアミノ酸が観測され、変異タンパク質を用いた定性実験を行なったところ、補酵素FADのプロトン化に寄与する新規アミノ酸側鎖を同定することに成功した。 また、CraCRYのDNA修復機構を明らかにすべく、CraCRYとDNA複合体結晶を用いたSACLAでのTR-SFX測定を試みたが、回折が得られず、結晶化の条件検討が必要となることがわかった。 CraCRYの二元機能性がどのように調整されているか調べるため、様々な光回復酵素と二電子還元型FAD(FADH-)の熱力学的および速度論的安定性を評価したところ、DNA修復活性を向上させることが知られている集光アンテナ分子の結合の有無で、CraCRYにおけるFADH-の安定性が著しく異なることがわかった。本件については、論文投稿を行い現在査読審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CraCRYの光応答シグナル伝達機構の解明という点においては、当初は本年度内に論文投稿を行う予定としていたが、集光アンテナ分子の結合によってCraCRYの二元機能性が分化している可能性が浮上してきたため、その分子の結合状態における光誘起構造変化についてさらなる知見を得る必要がある。当初の予定は達成されている中で事前に予想し得ない知見が得られている現状に鑑みて、予想以上に進展しているといえる。 一方で、DNA修復機構の解明という点においては、結晶作成条件からやり直しとなるため、やや遅れ気味であるといえる。そのため、溶液中におけるDNA修復反応をとらえる共同研究をさらに推進し、まずはそちらの論文投稿を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度のSACLAビームタイムにて、集光アンテナ分子結合型CraCRYにおける光誘起構造変化を捉える。また、SACLA BL2では測定できないピコ秒からナノ秒の時間領域におけるタンパク質構造変化については、SwissFELでの2023年度ビームタイムを獲得しており、そちらで集光アンテナ分子の有無の比較を同時に行う。これらの結果をまとめ、年度内の解析終了をまずは目指す。 また、CraCRY-DNA複合体の結晶についても並行して条件検討を進める。シンクロトロンを用いたDNA修復反応後の構造変化の追跡には成功しているので、こちらについて2023年度内の論文投稿を目指す。 そのほか、タンパク質の化学ラベル化法を用いた構造変化の検出を行うことで、相補的な結果が得られるか検討する。
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