2022 Fiscal Year Annual Research Report
高速分子動画でTRPチャネルの温度センサー部位を見極める
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
22H04753
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
日野 智也 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (40373360)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPチャネル / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPチャネルは、脊椎動物において環境温度の感知機能を担う陽イオン選択的イオンチャネルである。これまでに、クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)単粒子解析やX線結晶構造解析により、多くの温度応答型TRPチャネルの立体構造が解明されてきた。しかし、熱感知機構において最も重要な温度センサー部位についてはほとんど情報が得られていない。申請者はTRPチャネルの構造生物学研究に継続的に取り組み、ヒト由来TRPV3とTRPV4の結晶化及びCryo-EMによる高分解能マップの取得に成功した。そこで本研究では「温度」と同様な物理刺激である光を受容するタンパク質の構造変化を高い時空間分解能で動画化することが可能なシリアルフェムト秒X線結晶構造解析(SFX)法に温度ジャンプ法を組み合せ、熱刺激直後に起こる構造変化を検出することによりTRPチャネルの温度センサー部位の同定を目指す。 これまでのところTRPV3の結晶は品質が低くX線結晶構造解析には至っていない。そこで、今年度はTRPV3微結晶の高品質化を達成するための微結晶品質評価法の構築に取り組んだ。TRPV3では結晶化スクリーニングを行うと多くの条件で粉末状の沈殿物を形成するが、これらが不定形の沈殿であるかあるいは微小結晶であるかを簡便に判断するために、SPring-8ビームラインBL26B1に設置されている、結晶化プレート上の液滴に直接X線を当てることが可能なプレートスキャンシステムの使用を試みた。その結果、従来とは異なる新たな結晶化条件を見出すことができた。その中には結晶中のタンパク質の並び方が異なるものも含まれていたため、今後の高品質化が期待できる。 一方、TRPV4では、クライオ電子顕微鏡単粒子解析により分子モデル作成が可能な分解能でマップを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で構造決定可能な品質のTRPV3微結晶を得ることができていないため。しかし、微結晶を素早く評価できる手法を確立できたため、今後速やかに良質な結晶を作成し、研究目標達成に少しでも近づきたい。一方で、TRPV4についてはやや膜貫通ドメインの分解能に不足が認められるが、順調に分解能が向上している。
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Strategy for Future Research Activity |
プレートスキャンシステムを用いて微結晶品質評価を進め、より高品質な微結晶化条件の探索を進めると同時に、LCP法など他の結晶化手法を取り入れ、分解能向上に努める。また、微結晶中でのTRPV3の温度感知システム作動性を確認する手法を確立するために、赤外分光法による構造変化検出を試みる。 TRPV4に関しては、膜貫通ドメインの分解能向上に向けた発現コンストラクトの変更に取り組むとともに、活性化温度以上の熱を負荷した状態で試料を急速凍結しクライオ電顕での立体構造決定を目指す。
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