2022 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌無細胞合成系を利用した光反応性非天然型アミノ酸導入タンパク質調製法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
22H04759
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
保坂 俊彰 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 技師 (40462725)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SACLA / 非天然型アミノ酸 / 大腸菌無細胞合成系 / 時分割結晶構造解析 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
播磨に設置されたX線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAでは、X線レーザーをフェムト秒パルスで発生させることができる。これにより、一個のタンパク質結晶に対して、一発のパルスX線レーザーを照射することで放射線損傷のないX線回折データを得ることができ、X線による放射線損傷の無いタンパク質の構造解析を行える。さらには、タンパク質の構造変化を引き起こすような光(ポンプ光)をタンパク質結晶に照射することで、フェムト秒からミリ秒にかけてのタンパク質の構造変化を観察することができる。この時分割SFX(serial femtosecond crystallography)実験は、他の実験手法では到達できないような時間分解能かつ高解像度の構造情報を得ることができ、タンパク質の動的メカニズムを明らかとすることができるユニークな手法である。ただし、その動きを「きれいな分子動画」として扱うには、その動き出しを厳密に制御する必要がある。この動き出しを制御できない場合には、「ノイズだらけの動画」となってしまう。 一般的なタンパク質では、構造変化を引き起こすトリガーとなる光に反応する物質を持たない。そこで、申請者は大腸菌無細胞合成系において、非天然型アミノ酸であるケージド-Tyr(o-nitrobenzyltyrosine)を導入したタンパク質調製系を開発し、実際に光照射により、ケージド保護基が外れて、天然状態(Tyr)となることを証明した。この技術を用いることで、一般的なタンパク質で時分割実験を広げて行ける可能性を着想した。 今年度は、高度好熱菌由来ホモイソクエン酸脱水素酵素に、酵素反応に関与するTyr部位に非天然型アミノ酸であるケージド-Tyrを導入し、ポンプ光により酵素反応を引き起こすこと、実際にX線結晶構造解析により、ケージド-Tyrが該当部位に入っていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホモイソクエン酸脱水素酵素に非天然型アミノ酸を導入したタンパク質の調製などは、当初予定通りに終了した。このタンパク質が光を照射することで、酵素反応が開始することと、結晶構造解析により、ケージド-Tyrが該当部位に入っていることを確認できるなど、当初の予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ケージド-Tyrを導入したホモイソクエン酸脱水素酵素について、分光学実験により、溶液中や結晶中でケージド基が外れるのかを確認することと、実際に結晶構造解析により、反応中、もしくは反応後の構造解析を行っていく。
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