2022 Fiscal Year Annual Research Report
The elucidation of the metal accumulation in islets of human diabetes model mice
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
22H04801
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
福中 彩子 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (60586402)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト型糖尿病モデルマウス / 毒性オリゴマー / アルミニウム / 鉄 / 亜鉛 / ミトコンドリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ヒトの糖尿病の発症機序と元素動態の異常との関連性を解明するために、理化学研究所SPring-8高輝度放射光の高フラックスな集光ビームを適用した走査型蛍光X線顕微鏡(SXFM)とICP-MSを用いて、ヒト型糖尿病モデルマウス(human islet amyloid polypeptide(hIAPP)-トランスジェニックマウス)の膵島領域の元素動態を網羅的かつ経時的に観察し、それらの金属元素動態変化の意義を明らかにしたいと考え研究を行っている。本年度は、①hIAPP-Tgマウスの膵島における金属動態変化と、②hIAPP-Tgマウスの膵島におけるアルミニウム蓄積の意義解明の解明を行った。①に関してはこれまでに糖尿病モデルマウスでは膵島において亜鉛の減少や鉄の増加が報告されていたが、我々の解析結果から、ヒト型糖尿病モデルマウスでは糖尿病に伴い鉄が減少することを見出し、鉄量がヒトの糖尿病進行の良いマーカーになる可能性を見出し、論文で報告した(Fukunaka A, Sci. Rep. (2023) 13(1):3484)。さらに、膵島内の金属の動態変化と細胞機能が関連することが示唆されたことから、金属元素動態変化とその他のオミクス解析や機能解析を組み合わせることにより、網羅的かつアンバイアスな観点から糖尿病の原因解明ができる可能性が示唆された。②に関しては、hIAPPの凝集体形成をアルミニウムが促進させる可能性を見出した。今後アルミニウムとhIAPPの毒性惹起機構について、凝集体形成亢進以外にも関与している可能性があるため、RNAseqなどの網羅的な解析も含めて検討していく必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①、②共に下記の理由により概ね順調に進展した。 ①hIAPP-Tgマウスの膵島における金属動態変化 hIAPP-Tgホモマウスの膵島では、糖尿病発症以前の5週齢から亜鉛量は減少するのに対し、糖尿病発症に伴い12週齢で鉄量は減少することを見出した。また12週齢のhIAPP-Tgホモマウスでは、グルコース応答性のインスリン分泌(GSIS)低下が見られるのに対し、高カリウム刺激時のインスリン分泌低下が認められないことから、KATPチャネル以前の経路が障害を受けていることが示唆された。亜鉛や鉄はミトコンドリア機能に関与することから、flux analyzerを用いてミトコンドリア機能を検討したところ、12週齢のhIAPP-Tgホモマウスではグルコース応答性のミトコンドリア呼吸が低下することが判明した。すなわち12週齢のhIAPP-Tgホモマウスの膵島では、鉄の減少に伴い、低酸素応答・解糖系が亢進することにより、ミトコンドリア機能低下に繋がっている可能性が示唆された。本解析により、膵島内の金属の動態変化と細胞機能が関連することが示唆された (Fukunaka A, Sci. Rep. (2023) 13(1):3484)。 ②hIAPP-Tgマウスの膵島におけるアルミニウム蓄積の意義解明 hIAPP-Tgホモマウス膵島にアルミニウムが蓄積する病態生理学的意義を調べるために、5週齢の野生型マウスとhIAPP-Tgホモマウスの膵島を用いてhIAPPとアルミニウムの有無により細胞死・凝集体形成に変化があるか調べた。その結果、膵島を200uMのアルミニウム存在下で12時間培養した条件では、hIAPP-Tgホモマウスの膵島では、細胞死の増加は観察されないものの毒性オリゴマーが有意に増加することが観察された。この結果は、hIAPPの凝集体形成をアルミニウムが促進させる可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の②の結果より、今後は観察した凝集体が、どのようなメカニズムで凝集体を形成したか、経時的に観察する。さらに同様の実験を、既報でhIAPPペプチドを用いて試験管内で凝集体形成が報告されている他の金属元素(亜鉛・鉄・銅)についても実施し、凝集体形成能や形成時間、細胞死にアルミニウムの場合と違いがあるか観察する。また、アルミニウムとhIAPPの毒性惹起機構について、凝集体形成亢進以外にも関与している可能性があるため、RNAseqなどの網羅的な解析も含めて検討していく必要があると考えている。 次年度はhIAPP-Tgマウスの膵島でのアルミニウムの集積の機序の解明に取り組む。まずhIAPP-Tgマウスの膵島内のどの細胞にアルミニウムが蓄積するか明らかにする。膵島はb細胞を含む様々なヘテロな細胞から構成される。そこで膵島内のどの細胞にアルミニウムが蓄積しているか、3次元内部構造を非侵襲観察できる軟X線顕微鏡装置(CARROT)を用いて可視化する(理化学研究所 志村博士との共同研究)。さらに、hIAPP-Tgマウスの膵島内にアルミニウムが蓄積する機序を明らかにする。アルミニウムは他の金属に比べて配位子交換速度が小さいため、一旦タンパク質に結合すると離れにくい性質を有する。そのため、一旦アルミニウムがhIAPP(もしくはhIAPP由来の毒性オリゴマー)に結合すると解離しにくくなることで毒性を発揮している可能性について検討する。hIAPP(もしくはhIAPPの毒性オリゴマー)とアルミニウムが結合しているかを、アルミニウムを検出できる蛍光プローブを用いて観察する。
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