2022 Fiscal Year Annual Research Report
Homeostasis of Early Transition Metals Regulated by Molybdenum Transport Protein
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
22H04819
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤枝 伸宇 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (00452318)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モリブデン貯蔵タンパク質 / モリブドプテリン / ニトロゲナーゼ / ポリオキソメタレート |
Outline of Annual Research Achievements |
前周期遷移金属の内、モリブデンMo, タングステンW, バナジウムVは酵素活性中心として様々な機能を司っており、その生体内動態の詳細解明が望まれている。そこで、これらオキソ酸を結合・輸送・貯蔵するタンパク質を包括的に特性解析することによって、前周期遷移金属オキソ酸の動態を体系的に理解する。遷移金属であるモリブデンは、天然において酵素活性中心として幅広く利用されており、現在50以上のモリブデン含有酵素が知られている。生体内で、モリブデンはプテリン誘導体と結合し、ヒポキサンチンをキサンチン、そして尿素へ酸化するキサンチンオキシダーゼや、アルデヒドをカルボン酸に酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼ、亜硫酸を硫酸に酸化する亜硫酸オキシダーゼなどの補酵素として働いている。このように人体では有害物質の代謝に関連する一方で、自然界では、窒素、炭素、硫黄の循環に関する重要な反応を司っている。それらのなかでも、窒素を温和な条件下でアンモニアに変換するニトロゲナーゼは生物の生命維持に欠かせない酵素である他、ハーバー・ボッシュ法の代替となりうるため特に注目されている。ニトロゲナーゼの活性中心であるFeMo-co補因子にもモリブデンが存在する。また、Mostoと呼ばれるモリブデン貯蔵タンパク質は、ヘテロ6量体構造をとり、中心に大きな空洞を持つ。この空洞内にモリブデン酸をポリオキソメタレート(POM)の状態で約150原子貯蔵し細胞内のモリブデン恒常性維持に貢献している。FeMo-co補因子にモリブデンを挿入する際にMostoが関与すると推測されているがその詳細は未だ不明である。本研究では、新規なMostoホモログを探索し、その機能を比較することでMostoの作用機序を明らかにすることを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノムデータベースからA. vinelandii DJ由来Mostoのαサブユニットに類似のホモログを検索し系統樹解析をしたところ、いくつかのグループに分類された。本研究では、このようなA. vinelandii DJ由来Mostoとの比較から、Mostoホモログを選び異種発現系の構築を行った。strepタグを付与した遺伝子をプラスミドに導入し、大腸菌にてタンパク質を発現後、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーにより単離を試みた。SDS-PAGEで確認したところ、1本のバンドのみが観察されたため単離に成功したことがわかった。また、主要なヌクレオチド3リン酸存在下で行ったところ、金属オキソ酸と結合する際にATPが関与することが明らかとなった。また、ハンギングドロップ蒸気拡散法によって、タグを除去したMostoホモログを結晶化すると結晶が得られた。SPring-8 BL44XUにおいて2.5 オングストロームの回析データが得られた。既知のMosto構造を用いて分子置換により位相決定を行ったあと、構造モデルを構築した。その結果、Mostoホモログは6量体構造で、中心に大きな空洞を持ち、リン酸が1サブユニットにつき2分子結合していることが分かった。サブユニット構造はゲル濾過クロマトグラフィーの結果と一致しており、溶液状態においても同様の構造を取ることが示唆された。また、C末端は電子密度が完全に観測されるのに対し、N末端の数十残基の電子密度が見られなかったことから、精製過程においてN末端アミノ酸が加水分解されたことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの新規Mostoホモログをさらに生化学的特性評価、取り込み活性の評価を行っていく。A. vinelandii DJ由来Mostoと比較し、特徴のあるアミノ酸残基に変異導入することで、取り込み活性の変化を確認し、機能発揮に必須のアミノ酸残基を特定することに加えて、金属保持量の変化などを確認する予定である。また、モリブデン酸輸送体などとの相互作用解析等も行っていく。このように、発現精製したMostoの生化学的特性評価をすすめるとともにゲノムマイニングを行い新規なMostoの発現系構築、生化学的特性評価をあわせて行っていく。
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Research Products
(4 results)