2022 Fiscal Year Annual Research Report
Information physics for animal navigation behavior
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
22H04840
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚田 祐基 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (80580000)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情報理論 / 情報量最大化戦略 / 探索行動 / 神経情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
顕微鏡下で自由行動している線虫を自動追尾装置で追跡し、行動データを取得した。そして得られたデータを理論モデルに合わせて解析するため、時系列画像として記録した行動の定量を進めた。また注目している温度走性行動を制御していることが示されている神経細胞であるAFD感覚神経細胞とAIY介在神経細胞の活動を、カルシウムイメージングを用いて同時測定した。理論面についても、情報理論に基づいた数理モデルを検討し、関連研究領域における数式の検討と整理を行い、実際に得られている行動データを扱える数理モデルの構築を検討した。これらの解析は変異体と、細胞死を起こすカスペースの導入により特定の神経細胞を欠損させた線虫個体についても行い、特定遺伝子や特定神経細胞が行動と神経活動に与える影響を計測しながら数理モデルの検討を進めた。 さらに研究開始当初に想定していなかった発展として、行動計測をベースにした測定において、探索行動中に頭部の先端は連続して小刻みに動き、ある瞬間に後退行動を示すことが観察された。探索行動において頭部先端の小刻みなダイナミクスは、環境の探索を行っていると考えられ、体全体の移動ダイナミクスに先行したパターンを持つと考えられる。そこで、このときの頭部先端のダイナミクスと、身体全体のダイナミクスの関係に注目し、それぞれのダイナミクスが計測できる時間解像度で透過光画像のデータを撮影した。新学術領域内の共同研究として、理論研究グループと、この頭部先端ダイナミクスから得られる内部状態や体全体のダイナミクスに注目し、実験データに基づいた理論解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動データの解析については、独自に開発したトラッキングシステムを用いて取得した移動軌跡と時系列動画の解析を進めた。移動軌跡はxy平面上の時系列座標で、直進や方向転換などの行動は読み取れるものの、線虫の体の形から得られる行動や、状態の計測としては情報が落ちる。そこで動画データから行動や状態を抽出するプログラムを用いて、その統計情報を解析した。並行して、100個体程度の複数個体を同時に追尾するマルチトラッカーを用いて、温度走性行動中の行動要素の統計情報を解析した。それぞれのトラッキングシステムの統計情報を比較することで、実験条件による結果の違いや、解析方法の信頼性を検討した。 神経活動については温度走性に関わるAFD感覚神経細胞とAIY介在神経細胞の同時カルシウムイメージングを行った。AIYの神経活動領域は神経環でのみ計測され、この神経環での蛍光シグナルはAFDと被るため、それぞれの神経細胞に同じ蛍光プローブを発現させても同時計測はできない。そこで、AFDにGCaMP3, AIYにRCaMP2を発現させた組み換え体を作成した。さらに別の系統としてAFDの核領域だけにRCaMP2を発現させ、同時にAIY全体にRCaMP2を発現する組み換え体も作成し、AFDとAIYの同時カルシウムイメージングを行った。 理論解析については数理モデルの検討を進めている。関連する数理的な枠組みの関連性を整理し、情報量最大化(フィンフォタクシス)、自由エネルギー原理、ベイジアンフィルタとして知られている研究領域から、本研究に関わる数式や考え方を検討した。 さらに領域内での複数の共同研究も進行しており、本研究の実験的側面、理論的側面のそれぞれを生かした新たな発展も見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、実験データの取得と理論の解析を両輪として進める。実験データの取得は引き続き自動追尾装置を使った時系列画像の取得を進め、高倍率・高解像度データを取得できるように改良も進める。これまでの結果から、頭部先端の細かいダイナミクスがナビゲーションにおける情報処理と関連した観測値として期待できることがわかってきたため、頭部先端のダイナミクスに注目した計測も進める。そのため、特に時間解像度の向上をはかり、計測と解析の両方の観点から頭部先端の細かく速度の速い動きを捉える手法を確立する。 また本研究提案では情報理論や物理学的に重要な現象に注目し、特にノイズや確率的に見える現象の探究を行う。現在計測している神経活動のうち、AIY介在神経細胞の活動は条件によって確率的であったり決定的であったりするため、決定的に挙動する実験条件での応答性質を明確にした上で、確率的な挙動を示す実験条件での性質を明らかにする。そのため、嗅覚刺激については決定論的な応答を示す一方で、温度刺激については確率的な応答を示すAWC神経細胞にも注目する。AWC神経細胞の温度に対する確率的応答と、AWCとAFDの下流であるAIY介在神経細胞の、AFDとAWCへの依存性を定量し、環境からの刺激が安定的に感覚神経細胞で知覚される一方、積極的にノイズを生成し、行動制御に役たてているという見方に基づいて解析を進める。 本研究は実験と理論の両方を進めるが、特に理論的な側面については共同研究を積極的に進め、現在進めている共同研究とともに、情報量最大化方策などに基づいた数理モデルの構築について、領域内研究者を含めた議論の機会を増やす。
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Research Products
(2 results)