2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mortierella属菌の植物共生を制御する内生細菌の機能解明とその利用
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
22H04877
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Morteirella属菌 / 内生細菌 / 植物生育促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 本研究ではMorteirella属菌によるトマトの生育促進が植物のリン酸吸収を促進させる仮説を提唱し以下の実験を行った。筑波大学次世代農業研究部門から採取した土壌サンプルにより菌類を分離し同定した。その結果、M. hyalina(1菌株)、M. elongata(10菌株)およびMortierella sp.(3菌株)が分離された。その中で7菌株に内生細菌が存在した。植物接種試験の結果、M. hyalina K1、M. elongata K3、M. humilis S2で生育が促進された。植物体内のリン酸濃度測定では、M. humilis S2区でリン酸濃度が向上した。同菌類はリン酸可溶化能力を有しており、このことが植物体内のリン酸濃度の向上および地上部乾燥重量の増加に関与していることが推察された。 2. M. humilis S2を含むMortierella属菌を接種し、植物生育にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。供試菌株は6種8菌株、植物は、トマト、キャベツ、ホウレンソウ、およびキュウリである。トマトとホウレンソウでは、M. alpina KS.F.3.3.1を接種することで地上部重が有意に減少した。キャベツでは、何れの処理区でも乾燥重が有意に減少した。M. humilis S2およびM. verticilata YTM226以外で褐変や細根部の減少が見られた。キュウリでは、何れの処理区でも地上部重量が有意に増加した。次に、内生細菌の有無が植物の生育への影響を検討した。その結果、トマトでは、M. humilis S2とM. humilis S2の内生細菌除去株を接種した処理区では乾燥重に有意な差は見られなかったが、内生細菌除去株では細根部の減少が見られた。キャベツでは、内生細菌除去株では根部に褐変が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回のキーとなる菌株であるM. humilis S2の内生細菌の培養には成功しているが、継代途中で生育が止まり、菌株が途絶えてしまった。そのため、内生細菌フリーMortierella属の作出には成功しているが、その後の細菌の再導入技術の確立が思うように進んでいない。そこで、他の菌株、特にグループが異なる内生細菌の分離を新たに試みており、現在、結果待ちである。当初計画とは異なっているが、1で興味深い新規の発見もあり、総合的には順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
1では、Morteirella属菌によるトマトの生育促進が植物のリン酸吸収を促進させるという仮説が少なくともM. humilis S2では証明できそうな見込みが立った。しかし、内生細菌を除去した菌株を用いた試験は行っていないため、次年度は、同菌の内生細菌除去株を用いて同様の試験を行ない難溶性リン酸塩添加時にM. humilis S2の内生細菌の有無がトマトの生育に与える影響を明らかにする。 2では、グループが異なる内生細菌の分離を新たに試みており、分離菌株が得られ次第、内生細菌の入れ替えを行い、植物に接種することで、植物、菌類、および内生細菌の三者の相互作用解明を目指す。
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