2022 Fiscal Year Annual Research Report
ライブ顕微イメージングを通した海生真菌類の多様性と表現型可塑性の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
22H04884
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
五島 剛太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20447840)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海洋微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
海には多様な真菌類(糸状菌、酵母)が生息しているが、同じ微生物のバクテリアと比べても、生態系は全く掴めていないのが現状である。さらに最近、実験所の前の海で採集した海生酵母数種について、増殖表現型に可塑性があることを発見した。これまで実験室でプレート培養し記載されてきた成長や分裂の様式は、再検討が必要である。本研究では、海生真菌類の多様性の把握に加え、自然環境で海生真菌類は実際にどのような様式で増殖しているのかを明らかにすること、そして、表現型の可塑性の基盤となる分子機構の解明を目指す。具体的には、以下の3点が目標である。1) 実験室で実際の環境をミミックした条件を作り、ポストコッホ生態系の中での成長、分裂様式を明らかにする。2) 遺伝学解析を通じて表現型可塑性の分子基盤を明らかにする。3) 調査の手が及びにくい海域や他の生物に寄生する真菌類を採集、同定し、多様性の理解を深めるとともに、表現型可塑性の一般性を調べる。 初年度、各地で取得した海水、泥、生物片などから真菌類のサンプリングを行った。プレート上での単離、DNAバーコード配列解析により、新たに数十種の真菌類が同定された。糸状菌と酵母が含まれていた。種が不明のものも複数取得された。ライブセルイメージングにより、細胞密度に応じて成長・分裂モードを変換する種も複数見出された。 黒色酵母の同定不能種NU30とNU200については、培養後にDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて全ゲノム配列を決定した。系統樹解析の結果、両種はDothideomycetes綱に属する未記載種であることがわかった(Kurita et al. in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期待していた通り新しい真菌類の培養に成功したことに加え、2種の全ゲノム配列を決定して論文発表が確定したため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)海生真菌類の新たな単離、(2)ポストコッホ生態系の中での成長、分裂様式の検証、(3)表現型可塑性の分子基盤の解明、を引き続き3本柱に据え、研究を継続する。特に、表現型可塑性の分子基盤については、生物進化実験を用いた変異体の取得を通じて原因遺伝子、シグナル伝達経路解明へと迫るアプローチを考えている。
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