2022 Fiscal Year Annual Research Report
そして「僕」が「在る」:親の人生経験と子の他者信頼の関係を探究するトリオ脳科学
Publicly Offered Research
Project Area | Human behavioral science for subjectification ("tojisha-ka") by interaction-based & rule-/story-based understanding of the brain & the world |
Project/Area Number |
22H05209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松平 泉 東北大学, スマート・エイジング学際重点研究センター, 助教 (10878440)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | トリオ / 世代間伝達 / 社会的相互作用 / 前頭極 / 他者関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は本研究の対象である15歳以上の子とその両親で構成される親子トリオ105組のデータ取得を行った。このうち、脳画像の前処理と質問紙検査のデータ入力が完了した62トリオを対象として、親の青年期までの社会的相互作用経験(養育者との関係、友人関係、教師との関係、の3種類)と子の他者関係のあり方(親密な他者関係を避ける「回避傾向」、重要な他者からの「見捨てられ不安」、の2種類)の関連性を検討する予備解析を行った。その結果、母親の友人関係が子の他者関係のあり方に関与する可能性が見出された。具体的には、母親が「あっさりしていてお互いに深入りしない」友人関係を経験しているほど、子は回避傾向と見捨てられ不安を示しやすかった。また、母親が「意見が合わないときは納得がいくまで話し合う」友人関係を経験しているほど、子は回避傾向と見捨てられ不安が低かった。さらに脳画像解析を行ったところ、母親が「意見が合わないときは納得がいくまで話し合う」友人関係を経験しているほど、母親自身の左前頭極の灰白質体積が小さい傾向が見られた。一方、子は他者関係における回避傾向が高いほど、子自身の左前頭極の灰白質体積が大きい傾向が見られた。母親の友人関係、子の回避傾向、母子それぞれの左前頭極の構造が、世界との相互作用における個体の当事者化に何らかの関わりを持つ可能性が期待される。しかし、あくまでデータ収集の途上で行ったサンプルサイズの小さい予備解析であるため、慎重な解釈が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ取得は一定のペースで継続できており、目標サンプルサイズの達成までの道筋が見えている。現在までに取得済の脳画像の前処理を進めているが、これまでに経験のない手法に挑戦しており、習熟に多少苦戦している。先端バイオイメージング支援プラットフォームの支援を受けながら、解析手法の確立に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の達成に必要なサンプルサイズである138トリオの収集完了を目指し、2023年度も引き続きデータ取得を実施する。同時に、脳画像の前処理と質問紙検査のデータ化を進める。目標例数の取得完了後は、親子の脳構造の類似性と親の社会的相互作用経験、子の他者関係のあり方の関連性を分析し、親の人生経験が子の当事者化に寄与する可能性を探る。次回も公募班に採択され引き続き当該領域に携わらせて頂くことを当座の目標として、本研究課題の完成を最優先事項として取り組む。
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