2022 Fiscal Year Annual Research Report
大都市における人間-水循環システム相互作用メカニズムと現象の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Sciences for Sustainable Human-Aqua Environment |
Project/Area Number |
22H05234
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 晋一郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30579909)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 大都市 / 人間-水循環システム / 相互作用 / メカニズム / 社会水文学 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の大都市で生じる人間社会と水循環システムの相互作用メカニズムとその変化を解明し、海外の社会水文現象と比較することで、日本の大都市で生じる社会水文現象の特徴を明らかにした。社会水文学は、人間活動と水循環システムの間で生じる相互作用メカニズムを解明することを目的として生まれた新たな学問であり、近年、欧米を中心に急速に研究が進展している。しかし、これまでの社会水文学に関する研究は主に西洋文化圏における現象を対象にすすめられてきたことから、その概念や体系がモンスーンアジアの気候条件と社会規範を有する日本へと適応可能かどうかについて検証が必要である。さらに、人間活動の集中と急激な社会変化を伴う大都市における研究は、その複雑性から社会水文学において未開拓な対象である。そこで本研究では、日本の大都市を対象に、A)人間-水循環システム相互作用の変化プロセスの仮説化、B) 人間-水循環システムの相互作用メカニズムのモデル化と検証、C) モデル化された人間-水循環システムの相互作用メカニズムと海外の社会水文現象との比較を行った。 2023年度は、B) 人間-水循環システム相互作用メカニズムのモデル化と検証とC) 海外の社会水文現象との比較を実施した。前年度実施した都市水循環と社会の変化プロセスの体系化とメカニズムの仮説をもとに相互作用メカニズム内における主要要素を抽出し、抽出された各要素がどのように動的に相互接続されるか仮説を立てたうえで、要素間の因果関係を考慮した要素間因果関係モデルとして表現した。また構築した要素間因果関係モデルを対象地へと適用することで、そのモデルの再現性及び仮説の妥当性について検証した。この検証結果から、日本の大都市で生じる社会水文現象を定義し、その現象とこれまで他国で報告されてきた社会水文現象とを比較を国際ワークショップを通して実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本の大都市で生じる人間社会と水循環システムの相互作用メカニズムとその変化を解明し、海外の社会水文現象と比較することで、日本の大都市で生じる社会水文現象の特徴を明らかした。当初は日本の大都市で生じる社会水文現象を定義し、その現象とこれまで他国で報告されてきた社会水文現象とを比較を文献調査をもとに実施する予定であったが、フランスでの在外研究に合わせて国際ワークショップを通して実施することで、今後の更なる国際比較と連携の基盤を形成するとともに、河川消失が大都市の人間-水循環システム相互作用を伴う象徴的且つ共通的な現象であるとの新たな着想を得て、河川消失を中心とした相互作用メカニズムのモデル化が実現された。この成果をもとに2024年度の学術変革領域研究(A)(公募研究)へと応募し採択された。 以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を通して仮説を得た「河川消失 (Lost Rivers)」が生じる人間と水循環システムの相互作用メカニズムの都市間比較を行うことで、そのメカニズムの共通性あるいは差異性を明らかにする。 河川消失とは、水質劣化や洪水の激化、インフラ整備などを理由に、河川が暗渠化や埋め立てによって消失する現象のことであり、パリ、ロンドン、バンコク、ソウル、そして東京など、世界の大都市で生じた共通的かつ象徴的な現象である。東京での河川消失は、大都市の成長過程における複雑な人間と水循環システムとの相互作用メカニズムを伴うことが分かっているものの、そのメカニズムが他の大都市と比較してどのような共通性あるいは差異性があるのか明らかとなっていない。そこで本研究では、河川消失が生じたパリ、ロンドン、バンコク、そして東京を対象に、A)「河川消失」現象メカニズムの整理とモデル化、B)「河川消失」現象メカニズムの都市間比較を行うことで、それらの大都市で河川消失が生じる人間と水循環システムとの相互作用メカニズムの共通性あるいは差異性を明らかにする予定である。
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