2022 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の同位体と腸内DNAから読み解く環境情報
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Sciences for Sustainable Human-Aqua Environment |
Project/Area Number |
22H05235
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
兵藤 不二夫 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (70435535)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
Keywords | 昆虫 / 同位体 / 腸内DNA / 流域環境 / 水同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の人間活動の増大によって気候変動や窒素負荷、生物多様性の喪失といった地球環境問題が引き起こされている。この問題への対処には環境の現状の正しい理解が必要である。現在、全球レベルでの環境の把握は進んでいる。一方、人間が生活する流域スケールでの環境は、時空間的変動が大きいため、その把握に非常に多くのコストがかかる。本研究では最も生物多様性が高く陸上でバイオマスが大きい動物である昆虫に着目し、その同位体とDNA情報から流域スケールの元素循環と生物多様性に関する情報を効率的に取得する手法を提示することを目的とする。
2022年度は、日本のモニタリング1000の複数の森林サイトや関西の都市部で既に得られていた昆虫試料の酸素や窒素炭素の安定同位体や放射性同位体の測定や腸内DNA分析などを行った。その結果から、昆虫が周辺環境の窒素負荷や化石燃料の排出など、生息地周辺の環境への人為影響をよく反映していることが明らかになった。また、北海道から沖縄にわたり採集した昆虫の酸素同位体比は採集地点での河川水の同位体比を反映することが明らかとなった。このことから、酸素同位体は日本列島の昆虫の出生地の判別にも利用可能なことがわかった。これらの試料の分析の他、昆虫試料の保存や作業に用いられるエタノールや純水が昆虫の同位体比に与える影響についても確認する実験を行い、昆虫試料を同位体試料として用いることに問題ないことを確認した。さらに糞虫の腸内DNA分析の結果からは、哺乳類のDNAが検出され、餌資源として利用している哺乳類の同定が可能であることなどがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内DNA分析に関して、抽出部位の影響を検討することに予想以上に時間を費やしたが、検討の結果、良好な結果を得ることが出来た。その他、同位体分析等については順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
手法の有効性や分析精度などの検討を終えたので、2023年度は試料数を増やすこと、また他の研究班と連携して、環境水中の酸素水素同位体についても研究対象を広げる予定である。
|