2022 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧水生昆虫の現況と減少要因の解明、水環境の科学的知見に基づく環境再生
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Sciences for Sustainable Human-Aqua Environment |
Project/Area Number |
22H05245
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
苅部 治紀 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (50261194)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 農薬影響 / 気候変動 / 湿地創出・再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
・分布情報の収集:北海道道東・道北部の湿原・池沼で調査を実施した。危惧した通り2021年度の大きな干ばつ影響から移動能力の低いイトトンボ類や水生昆虫が激減し、ダメージからの回復は遅れているものと思われた。また、農薬影響をうける立地の池沼からは、絶滅危惧種のトンボがほぼ姿を消していた。近年調査ができていなかった島々では、宮古諸島の踏査を実施し、過去の記録と比較して確認できなくなっている種が多いことが判明した。かつての産地が消失しているところが複数あり、外来魚の侵入が各所で確認された。 継続観測している西表島の希少種生息池で、近隣に新たな畑が開かれ新たに複数のネオニコチノイド系農薬が観測されるようになり、生息種の急減が確認され、さらに事態は深刻化している。 ・気候変動影響の調査:干ばつ影響の検出のための機器設置は、水温データロガーの設置を北海道道北、道東の池沼、南西諸島の絶滅危惧種再導入地での設置を実施した。インターバルカメラによるタイムラプス機能での水変動観察も着手した。 ・農薬検査:各地で採水を実施し、解析結果がでたところでは、絶滅危惧種オオモノサシトンボをはじめとしたトンボ類が姿を消した池で、高濃度のイミダクロプリドの検出があった。急減の要因は農薬の可能性が高い。 ・事前環境スクリーニングによる湿地・池の創出と再生:事前の農薬や外来種スクリーニングによって、リスクの低い箇所に掘削した池でモニタリングを継続した。事前には干ばつ対応を想定していたが、逆の多雨による影響を受けたため、緊急に排水パイプを設置して水位を管理する順応的管理を実施した。また人工容器の集中設置は西表島で設置を終えた。今後モニタリングするとともに、北海道での設置も検討する。釧路市では、絶滅危惧種生息池が周囲の樹林の繁茂で水域の被陰が進行しることが判明したため、枝打ちによって日照の改善を図る作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自身の膝の手術など体調不良の影響を受けたが、夏場以降は状況はかなり改善し、予定していた計画の多くを遂行できた。一方、水中での調査や作業は影響を受けて、支援をうけながらの実施になったため、予定した通りには遂行できなかった部分がある。 これらを含めて今年度進捗させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
分布情報の収集:2022年度に調査が実施できなかった、沖永良部島などの島嶼の昆虫相調査を実施する。絶滅危惧上位種の産地は、定期モニタリングを継続し状況の変化を検出していく。 気候変動調査:干ばつモニタリングは、水温ロガー+インターバルカメラによる変化検出試験の結果を検証し、A01と共同した流入量の予測を元に、改善を図り、手法として確立させていく。他地域への展開も試行する。 農薬検査:引き続き、現存する絶滅危惧上位種生息地の網羅的な調査を主として展開し、結果を検証していく。 事前環境スクリーニングによる湿地・池の創出: 前年度創出したり、環境再生を施した池・湿地の飛来定着状況のモニタリングを継続する。特に琉球では早いスピードで移行が推測される植生遷移を管理するメンテナンス頻度の検証も行い、水辺ビオトープ管理のマニュアル作成を行う。
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Research Products
(8 results)