2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of quantum theory of gravity based on the Jackiw-Teitelboim gravity theory
Publicly Offered Research
Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
22H05259
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
吉田 健太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30544928)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / カオス / 可積分性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論は、自然界に存在する4つの力である、電磁気力、弱い力、強い力、重力を統一的に記述できる究極理論の有力な候補の一つとして目されている。しかし、この超弦理論は摂動論的にしか定義されておらず、その非摂動論的な定式化は現在も研究が続いている。 非摂動論的な定式化の候補として、Banks, Fischler, Shenker, Susskindによって提唱された行列模型がある。この模型は4人の著者の頭文字をとってBFSS行列模型とよばれている。この行列模型のポテンシャルには平坦方向が存在するため、力学的な自由度の膜(メンブレイン)が無限に伸びていく不安定性(メンブレイン不安定性)が存在する。 本研究では、このメンブレイン不安定性とカオス的な崩壊の関係を議論した。特に、膜の運動を決める初期値空間に現れるフラクタル構造を明らかにし、そのフラクタル次元を計算した。今後、このフラクタル次元と膜のダイナミクスの関係について解明したい。 また、カオスに関連した別の研究課題として、AdS_5xS^5上の超弦理論におけるペンローズ極限と可積分性の関係について調べた。この理論のペンローズ極限を取りきると質量項をもつ自由場の理論となり、厳密に解けることが知られている。また、AdS_5xS^5上の超弦理論それ自体が可積分であることも知られている。よって、我々の研究以前は、このペンローズ極限の補正項を入れても可積分性を保つと信じられていたが、実際には補正項によって可積分性が破れることを、ポアンカレ切断とリヤプノフ指数を計算することによって具体的に示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
情報喪失問題とカオス的な散乱の関係を研究している中で、自分が昔に研究していたBFSS行列模型におけるメンブレイン不安定性とカオス的な崩壊が同一視できる、と気付いた。それにより、超弦理論の文脈におけるカオス的な振る舞いの研究として新しい研究の方向性を見出すことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、BFSS行列模型におけるカオス的な崩壊とメンブレインのダイナミクスの関係をより詳細に調べ、散乱領域におけるポテンシャルの生成するカオスに付随するリヤプノフ指数との関係を明らかにしたい。
|