2022 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical modeling of optomechanical pendulum for testing quantumness of gravity
Publicly Offered Research
Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
22H05263
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 一博 九州大学, 理学研究院, 教授 (50284154)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 巨視的量子現象 / 量子制御 / 量子フィルター / オプトメカ |
Outline of Annual Research Achievements |
オプトメカニクスは、巨視的物体の量子状態を生成するため、また重力の量子的性質を検証するため有望な方法と考えられている。オプトメカ振動子の量子状態を達成するには、連続測定による量子制御技術が不可欠である。本研究で、ファブリ・ペロー・マイケルソン干渉計で同相出力光と差動出力光を測定することにより、鏡振動子の同相モードと差動モードのスクイーズ状態の生成を調べた。散逸を伴う光学系のカルマン フィルターを使用して、定常状態周りの鏡の運動の共分散行列を注意深く導出し、ミラーの機械的な共通モードと差動モードの状態が非対称に高純度でスクイーズされると、ミラー間のエンタングルメントが生成されることを示した。これは、ハーフビームスプリッターを通過するスクイーズされたビームによって量子もつれが生成される現象に起因している。さらに、エンタングルメントの生成を最適化する条件を明らかにした。 次に、実際の実験で上記の結果の実現可能性を調査するために、キャビティ光と結合した懸架鏡の振り子の理論モデルを開発した。この模型では、外部入力レーザーと、光学キャビティの一端を梁によって吊り下げられた鏡により構成されるオプトメカ系に、鏡の有限サイズ効果として回転モードの自由度が含まれる。さらに、梁の内部散逸が振り子運動のノイズに影響する。これらを取り入れ、低周波領域における振り子モードと回転モードの2モード理論の定式化を行い、定常状周りの摂動解析で、結合された調和振動子の類推に基づいて振り子モードと回転モードのモード混合が生じることを示した。モード混合が発生した場合、振り子モードの散逸の大きさを表すQuality factorが 4.38 分の 1 に減少することを理論的に示し、松本らの実験結果と一致することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、重力の量子力学的性質の検証を最終目標として、それに必要なマクロな量子系の量子制御のための基礎理論を構築することである。量子制御が可能な最も大きな質量を持つマクロな量子系をどのように実現し、重力が量子力学の枠組みに従うかどうかをどのように実験的に検証できるかを探究する。実験への応用を念頭において、精密な理論模型の構築とそれに基づいた理論予言を行い、重力が量子力学の枠組みに従うかどうかの検証に向けて有効な方法を探究する。特に、オプトメカと呼ばれる光学機械振動子系に着目し、実験に直結した理論模型を構築することを目標にしている。キャビティ光の連続測定による量子制御の理論を構築し、推定理論に基づく理論予言を行う計画である。 令和4年度に鏡振動子の振り子モードと回転モードのみかが有効な自由度となる低周波数の極限で、これら二つの自由度の運動と相互作用を記述する作用関数を導出し、2モード理論として定式化し運動方程式に関する解析を行なった。特に、ワイヤーの内部散逸に由来する鏡振動子の散逸について有効理論模型を構築した。また令和4年度の研究で、ファブリ・ペロー・マイケルソン干渉計で同相出力光と差動出力光を測定することにより、鏡振動子の同相モードと差動モードのスクイーズ状態の生成を調べ、二つの巨視的鏡振動子の量子もつれの実現可能性を明らかにした。これらの成果により、令和4年度の研究は、計画した研究が順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でキャビティ光と結合した懸架型鏡振動子の理論模型を構築した。この理論模型の特徴は、鏡を懸架するワイヤーの内部散逸に起因する鏡振動子の振り子モードの散逸として取り込むことができ、同時に運動の低周波数領域に限定することにより鏡の有限サイズ効果としての回転運動を振り子運動とともに考慮した2モード理論を構築した点にある。現在この2モード理論に基づいて、量子制御による鏡振動子の量子状態の理論予言を行なっている。振り子モードと回転モードのマルチモードのウィーナーフィルターを構築し、量子制御により近い将来期待 される懸架型オプトメカ鏡振動子の量子状態について理論予言が可能になる。懸架鏡を用いたマイケルソン干渉計に応用しハーフミラーによる二つの鏡振動子の量子もつれの生成可能性についても検討している。さらに得られるオプトメカに関する知識を応用して、重力相互作用に伴う量子もつれの生成機構について議論し、その実験的検証に必要な条件の解明を目指す。
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Research Products
(10 results)