2022 Fiscal Year Annual Research Report
Mesoscopic picture of black holes from quantum information
Publicly Offered Research
Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
22H05265
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
玉岡 幸太郎 日本大学, 文理学部, 助教 (30848354)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 量子情報 / ホログラフィー原理 / AdS/CFT対応 / 量子エンタングルメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果は、大きく分けて (1) ブラックホールの蒸発過程における対称性の破れの影響の理解、(2) 射影測定のブラックホール・ワームホール時空への影響の理解の2つに分けられる。
(1) ブラックホールの蒸発過程における対称性の役割を、symmetry resolved entorpy と呼ばれる情報量を用いて調べた。量子重力理論において、グローバル対称性は存在しないという期待がある。この期待を裏付ける理由の1つがブラックホールの蒸発する過程の定性的な考察である。この議論をより定量的に行うために、qubitの模型を使って、対称性の破れが量子情報量の性質にどのように影響するかを解析した。特に、Page時間近傍で対称性の破れの寄与が急激に増大することを明らかにした。この結果は、ブラックホールの蒸発過程がユニタリーであることを保証するためには、対称性の破れの効果が重要な役割を果たすことを示唆する。
(2) 射影測定は、量子操作の代表例である。ブラックホール・ワームホール時空に射影測定を行なった時のエンタングルメント・エントロピーや相互情報量の振る舞いを調べた。特に、このセットアップでの相互情報量は、operator mutual information と呼ばれる系のハミルトニアン(今の場合、重力双対を持つ共形場理論のハミルトニアン)が引き起こす情報のスクランブリングに射影測定がどのような影響を与えるかを理解できる。射影測定が量子相間や情報スクランブリングに与える影響や重力理論側での解釈(ブレーンの光円錐構造)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
領域内でのイベントをきっかけに、新しい共同研究の発足や研究成果の発表を行うことができた。当初全く予想していなかった当該研究に対する知見を多く得ることができた。一方、その反動で一部の当初の計画が遅れている。総合的に判断して、概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール・ワームホール時空に対する量子操作として、今年度は射影測定の与える影響を理解した。より”動的”な操作として、系のエネルギー流入を変化させたり、局在させるような操作を考えたい。これらの操作は、ブラックホールやワームホール時空の”形”そのものを変形させると期待できる。また、引き続き量子重力における対称性の役割を見直していきたい。AdS/CFT対応のトイモデルとして広く用いられている模型と量子情報理論の知見を用いて考察する予定である。
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Research Products
(10 results)