2022 Fiscal Year Annual Research Report
深部スロー地震断層のレオロジー不均質性に対する岩石・流体相互作用の影響
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Slow to Fast Earthquakes |
Project/Area Number |
22H05301
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平内 健一 静岡大学, 理学部, 准教授 (10633290)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / スロー地震 / 岩石・流体相互作用 / 含水鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
西南日本やカスカディアなどの温かい沈み込み帯の深部スロー地震発生域に相当する温度圧力条件下で形成された長崎変成岩類の蛇紋岩メランジュについて構造地質学的解析を行った。研究成果の概要は以下の通りである。 蛇紋岩メランジュはblock-in-matrix構造を呈していた。ブロックは海洋地殻を起源とする塩基性片岩からなり、開口(モードI型)および開口・剪断(モードI・II型)破壊に起因して形成された。マトリックスはCa角閃石(アクチノ閃石)、緑泥石、緑簾石が片理を形成していた。アクチノ閃石と緑泥石については強い結晶方位定向配列を示していた。以上のことから、蛇紋岩メランジュは脆性破壊(ブロック)と 粘性流動(マトリックス)が混合した変形機構をもっていたと言える。 ブロックの破壊様式およびマトリックスの鉱物モード組成の特徴は、(1)脆性破壊が間隙流体圧が過剰準静岩圧状態で起こったこと、(2)CaやAlに富む流体下で新たに析出した含水鉱物群のネットワークがメランジュ全体のレオロジーを支配していたことを示唆する。今回観察した蛇紋岩メランジュ(幅数100m)は、深部スロー地震発生域のプレート境界層を構成している可能性があり、脆性破壊の規模や粘性流動時の歪(すべり)速度が地震の震源パラメータに影響を及している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに野外地質調査を実施することができ、解析作業に必要なドローン撮影および岩石試料の採取を行った。採取した全ての岩石試料については、岩石薄片に加工し、偏光顕微鏡を用いて微細構造観察を行っている。さらに、レーザーラマン分光分析を行うことで、蛇紋岩メランジュを構成する含水鉱物の同定をした。以上のように、長崎変成岩類の蛇紋岩メランジュの記載岩石学的特徴についての理解が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
蛇紋岩メランジュのマトリックスを構成する含水鉱物群(アクチノ閃石や緑泥石)について結晶方位解析および主要元素組成分析を行い、具体的な変形機構を明らかにする。また、全岩化学組成分析を行うことで、マトリックス形成時に存在した流体の化学組成を明らかにする。
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