2022 Fiscal Year Annual Research Report
紀伊半島の広域野外調査による地震発生帯の内部構造復元とその形成様式の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Slow to Fast Earthquakes |
Project/Area Number |
22H05314
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
志村 侑亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20952071)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 付加体 / 高圧変成岩類 / 地震発生帯 / Slow-to-Fast / 紀伊半島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,白亜紀当時の地震発生帯で形成された浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類を対象に,野外調査に基づく地質図の作成,変形構造解析に基づく断層のすべり形態の把握,炭質物ラマン分光分析に基づく被熱温度の見積もり,およびXRD・XRF・ICP-MS分析に基づく断層岩の鉱物組成・化学組成の検討を行うことで,①地震発生帯におけるすべり形態と深度の関係を明らかにすること,②すべりをもたらす物質を明らかにすること,および③地震発生帯の内部構造を空間的に復元することである.2022年度は,上記の手法により断層のすべり形態と深度の関係・変化を追跡すること,およびすべりをもたらす物質を特定するための野外データや分析データを収集することを目標とした. 野外調査および変形構造解析の結果,浅部付加体では数百m間隔で断層が発達しているのに対し,深部付加体では数十m~数kmまで大小さまざまな間隔で断層が発達していることがわかった.また,浅部付加体と深部付加体では,断層の基底をなす岩相が異なることを見出した.このことは地震発生帯の深度に応じて断層の発生形態やすべりをもたらす物質が異なることを示している.炭質物ラマン分光分析については,浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類から約30試料の岩石試料を採取し,分析のための試料調製は完了している.本分析については2023年度優先的に実施する予定である.XRD・XRF・ICP-MS分析については,断層周辺から約30試料の岩石試料を採取し,XRF分析を実施した.分析の結果,断層の基底部には少なくとも2パターンの異なる化学組成を持つ岩石が分布することが示唆された.より詳細な検討のため,岩石粉末の酸分解や溶液化などICP-MS分析の準備を現在行っており,2023年度にXRD分析も含めて実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の紀伊半島を対象とした野外調査および変形構造解析により,浅部付加体と深部付加体では発達する断層の間隔や断層の基底をなす岩相が異なることを見出すことができた.また,断層の広域的な連続性・不連続性を検証するため,紀伊半島に加えて四国の調査も実施することができ,野外調査の遂行状況は良好である. 炭質物ラマン分光分析については,浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類から約30試料の岩石試料を採取し,分析のための試料調製を実施した.分析は,当初の計画よりもやや遅れているので2023年度に優先的に実施し,被熱温度を見積もる. XRD・XRF・ICP-MS分析については,岩石粉砕装置を導入したことにより迅速な岩石の粉末化を可能にした.断層周辺から採取した約30試料の岩石試料を粉砕し,XRF分析を実施した.分析の結果,断層の基底部には少なくとも2パターンの異なる化学組成を持つ岩石が分布することが示唆された.現在より詳細な検討のため,岩石粉末の酸分解や溶液化などICP-MS分析の準備を行うことができており,遂行状況は良好である.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類に認められる断層とその周辺地域を中心に野外調査および変形構造解析を行い,断層のすべり形態やすべりをもたらす岩相を認識する.また,炭質物ラマン分光分析,および鉱物組成や化学組成の分析を行うことで,地震発生帯における断層のすべり形態の深度変化やすべりをもたらす物質の違いについても詳しく検証する.さらに,浅部付加体,深部付加体,および高圧変成岩類が分布する地域の広域地質図を作成することで地震発生帯の内部構造を復元するとともに,紀伊半島における地質図ベースの研究開発プラットフォーム構築することでSlow-to-Fast地震学分野の更なる研究推進への貢献を目指す.
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