2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of organoboron photocatalysts and their automatic optimization based on machine learning
Publicly Offered Research
Project Area | Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS) |
Project/Area Number |
22H05351
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
隅田 有人 金沢大学, 薬学系, 助教 (40630976)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | ラジカル / 可視光 / 有機ホウ素 / 有機ケイ素 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応の探索と最適化は、用いる試薬・溶媒・温度・機器などの数多くの要因に支配されるため、網羅的な検討を行うには莫大な時間的・物的コストを要する。近年、この問題を解決するために、機械学習を基盤とした新しい反応データ解析手法が注目を集めている。これは分子変換開発におけるデータ作成と共有の規格化による化学のデジタル化であり、有機化学研究を劇的に加速するものと期待される。また機械学習による反応成分のコード化や反応のデータベース化は、研究開発の効率化だけでなく、再現性の問題やヒューマンエラーを減らし、大規模スクリーニング及び繰り返し測定を容易にすることから、セレンディピティを表出しやすくなる。一方で、データ駆動型あるいは機械学習による化学反応開発は、研究アイデア、つまり種となるデータが存在しないと成立し得ない。このことから、化学者による斬新な分子や反応デザインの必要性はより高まっていくものと考えられる。そのような中、光レドックス触媒化学の飛躍的な発展を背景に、後周期遷移金属を中心元素とした光触媒だけでなく、有機光レドックス触媒の開発も盛んに行われている。有機光レドックス触媒はその構造可変性から酸化還元電位の微調整や水溶性・脂溶性の向上、また触媒に新たな機能の付与が容易に行える。 本研究では、有機光レドックス触媒の新機能開拓とその機械学習による触媒構造の自動最適化を目的として、有機ホウ素あるいはケイ素光レドックス触媒の設計とそれを利用した光駆動型の一電子移動反応の開発を目指した。昨年度では、有機ホウ素を基盤としたモジュール型光触媒と有機ケイ素で架橋された新規ベンゾフェノン型光触媒を見出した。これらの触媒はそれぞれ、種々の光レドックス触媒反応に適用可能であり、特に有機ケイ素光触媒は従来法とは異なる選択性でリグニンの形式的ラジカル分解が進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は(1)および(2)の実施計画から成っている。すなわち(1)光触媒の系中形成による酸化還元能の精密制御システムの開発と(2)水素引抜き/一電子供与/ルイス酸部位を有する複合機能光触媒の開発であり、いずれも概ね計画通りに開発が進んでいる。(1)では申請者の前研究で見出したホウ素アート錯体の特性に基づいて、有機ホウ素光レドックス触媒の端緒を掴んでいる。本光レドックス触媒はモジュール型であるため、簡便に触媒分子構造を改変できる。結果として10種類以上の類似構造を構築でき、種々の光レドックス触媒反応に適合する触媒を見出すことに成功している。 また(2)では、当初の有機ホウ素架橋型ではなく、有機ケイ素架橋型の触媒が安定かつ光レドックス活性を示すことを見出した。本触媒のレドックス活性と水素引抜きといった複合機能を利用することで、バイオマスの一種であるリグニンのラジカル的分解に着手した。その結果、従来の方法とは異なる選択性でリグニン分解が進行し、アルデヒドとフェノールといった高付加価値のある化成品が得られることを見出した。本触媒系に基づき、ポリマー分解の中でも近年とくに注目を集めているアップサイクリングシステムの構築が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず研究計画(1)においては、さらなる構造展開による有機ホウ素光レドックス触媒のライブラリ化を進める。具体的には、申請者の前研究で見出した有機ホウ素分子では、光励起されて炭素-ホウ素結合が切断されていた。これにに対して、本研究では励起状態においても結合切断を伴うことなく一電子のみ授受可能となる分子骨格を探索する。すでに酸素-ホウ素結合では開裂しないことからホウ素上にフェノールやアルコールを積載することで様々な光励起可能な有機ホウ素分子を見出している。これに加えてsp2炭素-ホウ素結合で構築された構造でも類似の性質が得られることがわかったため、迅速にライブラリ化を進める。これにより反応ごとの最適触媒のスクリーニングが可能となり、容易に目的化合物合成が行える。また本学術変革領域では機械学習による自動最適化を目的としているため、本モジュール型有機ホウ素光レドックス触媒の各モジュールの構造、電子状態をパラメータ化し、収率と紐づけることで、触媒の分子構造からの反応収率予測モデルの確立を目指す。 研究計画(2)においては、有機ケイ素架橋型のベンゾフェノン触媒がリグニンモデルをラジカル的に分解し、アルデヒドとフェノールといった高付加価値のある化成品が得られることを見出している。本反応は、より単純な電子豊富アレーンが置換した第二級および第三級アルコールへと一般化できる可能性を秘めている。そこで、可視光によるリグニン分解のアップサイクリングシステムの構築を進めるとともに、より一般性の高い光レドックス触媒反応の開発へと進めていく。さらにベンゾフェノン触媒も構造可変性が高いことから(1)と同様に構造、電子状態をパラメータ化が可能である。この特性を活かして、触媒の分子構造からの反応収率予測モデルの確立を目指す。
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