2022 Fiscal Year Annual Research Report
Towards Green Manufacturing: Machine Learning Optimization of Synthetic Methods and Understanding of Chemical Reactions
Publicly Offered Research
Project Area | Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS) |
Project/Area Number |
22H05353
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
間瀬 暢之 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (40313936)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | グリーンものづくり / 機械学習最適化 / フロー合成 / マイクロ波フロー / 実験計画法 / 連続型変数最適化 / 離散型変数最適化 / プロセス分析技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
独自に開発してきたフロー技術とプロセス分析技術によるWet実験の迅速化と自動化、ならびに実験計画法と機械学習(ML)などのデジタル技術による反応条件と化学構造の最適化を導入し、ラボから生産スケールにおける環境低負荷と省人化を可能にする革新的フロー合成プロセスプラットフォームの構築を目的とし、「知識・経験という壁」により迅速なスケールアップが困難であった従来法の課題を克服することを目的とした。さらに、機械学習により特定される相関性が高い説明変数を精査し、新たな視点での化学反応の理解と原理原則の深化(縦展開)をするとともに、化学・工学・情報学などの異分野融合が必須であるグリーンものづくりの進化(横展開)へと発展させることが最終目的である。 2022年度には、「グラジエントフロー手法による連続型変数最適化」を実施した。フロー法の定常状態では出口組成が一定となることから、1回の実験で1データしか得られないため、反応条件最適化には実験時間や回数、試薬消費量の増加が問題となる。そこで、フロー法の擬定常状態を利用し、流量と温度を経時変化させて1実験で複数反応条件の収率データを取得する「グラジエント法」を開発した。この方法では、サポートベクターマシン回帰を用いて応答曲面を作成し、最適条件を探索した。本研究で取り上げたモデル反応は、過剰反応の制御が必要なtert-BuOHの無水酢酸によるアセチル化であり、流量、温度、無水酢酸当量、DMAP当量の最大4変数最適化を実施した。また、最適条件探索効率を従来の実験計画法であるcentral composite designsおよびBox-Behnken designsと比較し。その結果、2変数では1回の実験、3変数では3回の実験、4変数では5回または9回の実験で従来の実験計画法以上の高精度応答曲面作成と最適条件探索を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に検討予定であった「グラジエントフロー手法による連続型変数最適化」は、計画通りに進捗し、おおむね終了した。このプロジェクトでは、最適化手法を実装し、連続型変数の処理に関して92%の実験回数削減が達成された。また、結果の精度も向上し、従来の手法に比べて誤差率が6%減少した。さらに、2023年度に終了予定の「グラジエントフロー手法による離散型変数最適化」について、現在プロジェクトは進行中であり、装置の組み上げ作業が開始され、これまでのところ50%の進捗である。また、新たな最適化アルゴリズムを適用することで、離散型変数の処理に関する効率も改善が見込まれる。これまでのシミュレーションでは、ランダムな方法と比較して11ポイントの標準偏差の改善が見られた。今後は、装置の組み上げを完了させ、データベースの構築を進めていく。また、最適化アルゴリズムの改善や検証にも努め、誤差率をさらに低減させることを目指す。 総じて、現在までの進捗状況は予定通りであり、今後の目標達成に向けて着実なステップを踏んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の全体構想は「有機合成(実験科学)とデータサイエンス(情報科学)の融合によるグリーンものづくりの確立」であり、これまでのフロー合成研究において明確化されていない相関関係や因果関係のある変数の特定に挑戦する。溶媒や触媒などの分子選定において、個人の知識や経験の範疇を超えた分子の提案は挑戦的な課題である。2022年度に取り組んだ「グラジエントフロー手法による連続型変数最適化」により得られた最小Wet実験数における適化手法を拡張し、2023年度に「グラジエントフロー手法による離散型変数最適化」、すなわち、溶媒、基質、試薬、触媒などを最適化する。具体的には、温度グラジエントフロー条件で各種溶媒の反応データを連続的に取得し、機械学習により同じ溶媒が予測されるまで最適化する。離散型変数である分子の数値化は、分子の特徴を化学構造に基づいて数値として表わした分子記述子を用いる。数千以上の分子記述子の中から、化学反応における重要度が高い変数を機械学習により特定し、その変数を精査することにより新たな視点での化学反応の理解と原理原則の深化(縦展開)に取り組む。 本研究が予定以上に進んだ場合を想定して、展望について述べる。本研究により各々の反応条件の最適化は達成できると考えられる。しかし、多段階反応において、各段階の反応を最適化しても、合成スキーム全体での最適値と一致するとは限らないことから、全体を最適化するプロセスインフォマティクスが必要である。しかし、工程数が多くなると、その最適化は煩雑となり、Wet実験回数を増やさざるを得ないのが現状である。如何に工程数を削減するかが鍵であり、研究代表者が開発してきたグリーン技術「ファインバブルを用いた有機合成」や「マイクロ波等を用いた化学量論的フロー合成」を適用することにより後処理工程を削減し、化学合成プロセス全体の最適化と省人力化を達成する。
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Research Products
(15 results)