2022 Fiscal Year Annual Research Report
分子間フラストレーションのデジタル化が創出するアミノ酸の環境調和型官能基化
Publicly Offered Research
Project Area | Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS) |
Project/Area Number |
22H05363
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星本 陽一 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30710074)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 水素 / ペプチド / 触媒 / アルキル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸は食品や医薬、農薬などに含まれており、我々の日々の生活に密接に関連する重要な化合物である。また最近では、アミノ酸が連結したペプチドも、特に創薬分野への応用が期待されている。ゆえに、アミノ酸・ペプチドを高度機能化した、新たなアミノ酸・ペプチドへと変換する手法の開発は重要である。例えば、ペプチドに含まれる窒素原子のアルキル化反応は、ペプチドの代謝安定性を改善し、生物活性を改善することが知られている。しかし、カルボキシル基(COOH) やヒドロキシル基 (OH)、チオール基 (SH)など複数の極性官能基が混在するアミノ酸やペプチドを、毒性の高い副生成物を出さずに、短行程でアルキル化することは難度の高い挑戦的な課題であった。 このような背景の下、本研究は、独自のトリアリールホウ素触媒を巧みに設計することで、多様なアミノ酸やペプチドをアルキル化する革新的手法を開発した。当該手法は、入手容易なアルデヒドと水素を組み合わせてアミノ酸をアルキル化するため、毒性がゼロに近い水のみを副生成物として排出する。また生体に対する毒性が懸念されるような金属や溶媒を含まない点も注目に値する。本成果を達成する鍵となったのが、機械学習を活用したトリアリールホウ素触媒の迅速な最適化プロセスである。我々は、世界最大規模のホウ素触媒ライブラリーをコンピュータを駆使して構築し、ライブラリーから得られる情報を機械学習で利用することで、ホウ素触媒探索プロセスを効率化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論化学計算を用いて、60分子のトリアリールホウ素を構造最適化し、種々の理論化学パラメータを採取した。これらを総括し、世界最大規模のトリアリールホウ素in-silicoライブラリーを構築した。また、標準的な反応条件をモデル反応と設定し、新規に合成したホウ素触媒を含むいくつかの触媒の活性を評価して、実験パラメータを採取した。これらの理論、および実験パラメータを機械学習に活用した。具体的には、ガウス過程回帰により、実験を行っていないホウ素触媒の活性(触媒回転数TOF)を予測するための収率予測モデルを構築した。モデル構築時には、TOFを目的変数、2つの理論パラメータを説明変数として採用し、それら変数の最適化を行った。以上の結果、適切な説明変数を明らかとすることに成功し、高活性触媒の候補分子も2-3個を推定した。最終的にはこれらを実験により合成し、最も活性の高い最適触媒を明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
最適触媒が得られたため、続いて、その他の反応条件を最適化する。具体的には、溶媒の最適化を環境毒性の観点も踏まえて最適化し、つづき、水素圧、温度を最適化する。 その後、官能基評価キットを用いて、本反応系の適用範囲を探索する。 最後に、多様なアニリン骨格を含むアミノ酸やペプチドの還元的アルキル化に挑戦する。
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