2022 Fiscal Year Annual Research Report
電子伝達可能な無細胞分子システムの合成およびエネルギー移動制御
Publicly Offered Research
Project Area | Bottom-up creation of cell-free molecular systems: surpassing nature |
Project/Area Number |
22H05397
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 博弥 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60838217)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 人工ベシクル / 電気化学 / 生物模倣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、膜内外の電子・エネルギー移動を可能とする、電子伝達人工ベシクルの設計を提案する。脂質二分子やタンパク質などを組み合わせた人工二分子膜はライフサイエンス分野を中心にセンサや薬剤、バイオリアクターなどへの研究開発が盛んに行われている。一方、自然界に目を向けると、ミトコンドリアの内膜や微生物などが有する二分子膜では、イオンや分子の取り込み以外に膜表面もしくは膜内外に電子を伝達する電子伝達タンパク質を有している。例えば微生物では膜中に電子伝達可能なタンパク質であるマルチヘムシトクロムを有しており、膜外から電子、つまりエネルギーを得るもしくは放出することができる。微生物ではこの電子移動を利用して同種・異種の微生物間のコミュニケーションにも利用している。そこで本研究では、電子伝達可能な両親媒性分子を合成することで、電子伝達つまりエネルギー移動が可能な無細胞分子システムを構成し、電子伝達を介したベシクル内外のエネルギー移動の制御に挑戦する。さらに、ベシクル中に酸化還元物質を導入し、電極と組み合わせることで、電子伝達可能な無細胞分子システムから成る充放電可能な超大容量レドックスキャパシタの構築を目指す。 初年度では、電子伝達機能を示すいくつかのフタロシアニン誘導体を合成し、基本的な性能評価を行った。フタロシアニンに導入する官能基によって中心鉄イオンの酸化還元電位を制御できることを明らかにし、膜内電子移動のエネルギー制御に有効であることを見出した。また、配位子を導入することでフタロシアニンの固定化量が増大することを確認し、電子伝達人工ベシクルの設計において重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、電子伝達機能を示すいくつかのフタロシアニン誘導体を合成し、基本的な性能評価を行った。フタロシアニンに導入する官能基によって中心鉄イオンの酸化還元電位を制御できることを明らかにし、膜内電子移動のエネルギー制御に有効であることを見出した。また、配位子を導入することでフタロシアニンの固定化量が増大することを確認し、電子伝達人工ベシクルの設計において重要な知見を得た。さらに、触媒としての活性も非常に高いことが確認され、エネルギー変換デバイスとして有効であることも示された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では、順調にフタロシアニン誘導体の合成に成功している。最終年度となる2年目においては、合成したフタロシアニン誘導体を膜内に導入し、人工ベシクル内のフタロシアニンの酸化還元特性を評価する。脂質に配位子を導入したり、分子自体の疎水性を制御したりすることで、人工ベシクル内の導入量を増加を狙う。
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Research Products
(3 results)