2022 Fiscal Year Annual Research Report
合成分子と生体分子によって超越する遺伝子発現光制御システムの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Bottom-up creation of cell-free molecular systems: surpassing nature |
Project/Area Number |
22H05425
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蓑島 維文 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20600844)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 転写制御 / 光応答性色素 / 多剤結合転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生体分子、低分子化合物、光を用いて可逆的に遺伝子発現を制御できる手法の構築に取り組む。光は範囲、時間、強度、波長といったパラメータを調節して照射することができるため、時空間的な操作、変換量の細かい調節に優れている。転写制御因子と光変換可能な低分子を組み合わせて、天然の細胞が持たない、光の波長に応じた高い効率の遺伝子発現の活性化、不活性化の制御をシンプルな系で実現することを目指す。 光応答で駆動する遺伝子発現系を構築するため、バクテリアの薬剤排出ポンプの発現系を制御している多剤結合転写因子、QacRの機能に着目した。QacRは通常遺伝子のリプレッサーとして機能しており、転写を抑制しているが、カチオン性の色素分子と結合するとDNAから解離し、転写を活性化させる。そこで、カチオン性の色素に結合する性質に基づき、光を照射することでカチオン性が現れる色素を利用することで光駆動型の遺伝子発現系が構築できると考えた。色素を探索した結果、光活性化能を持つイメージング用色素として近年報告されたXanthone系色素を選択した。この色素を合成し、光を照射したところ速やかにカチオン性を持つ物質に変換されることを確認した。次に、この色素のQacRに対する結合能を蛍光偏光、ITCを用いて評価したところ、光照射後の化合物選択的にQacRと結合することを確認した。また、QacRに制御される転写量のコントロールが可能かin vitro transcriptionを利用してRNA量を調べたところ、発現量が光照射後に上昇していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は採択時から立ち上げたものであるが、光応答性分子の合成、多剤結合転写因子を利用した発現系の構築が順調に進んでおり、試験管内の評価において光による転写活性の制御を達成できたことから、当初の計画以上のペースで進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したQacRと光活性化色素を利用した転写制御法がタンパク質発現まで適用できるかどうか、in vitro及び生細胞における発現系に組み込むことで検証する。発現のレポーターとして、ルシフェラーゼ及び蛍光タンパク質を使ってまずは評価を行う。光照射の時間、強度、波長について検討し、光制御に適した条件について検討する。発現量の差が低い場合は色素およびQacRアミノ酸の変異体を用いることでスクリーニングを行い、発現量のさらなる上昇を目指す。また本発現制御系を用いた遺伝子発現制御技術への応用、共同研究を展開する。
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