2022 Fiscal Year Annual Research Report
脳変容メカニズムの解明のための転写因子活性センサス
Publicly Offered Research
Project Area | Census-based biomechanism of circuit construction and transition for adaptive brain functions |
Project/Area Number |
22H05482
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安部 健太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70462653)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
Keywords | 転写因子 / 単一細胞トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の適応的な行動を可能にする神経系の可塑的変化の過程では,脳内細胞が経験・活動・病態依存的にその遺伝子発現プロファイルを変化させることが重要である.転写因子は遺伝子発現を直接制御することでその変容過程を司るが,既存技術では成体脳内においてその時間的にダイナミックな活性や,多数の転写因子が協調的に機能する様子を観察・解析することは難しい.このため,本研究では,動物の成体脳のにおいて単一細胞レベルでの複数の転写因子の内在活性測定法を確立する。同時にその細胞の単一細胞トランスクリプトーム情報を取得し,単一細胞転写因子活性プロファイルと統合的にマルチオミクス解析を行う.本研究で確立する本手法,「転写因子活性センサス」により,脳機能変容に関わる神経回路を転写因子活性を指標に明らかにし,その機能を実験的に解明する. 本年度,マウス生体脳内の特定の細胞集団の内在転写因子活性を細胞腫特異的に定量評価することを可能にする実験技術を確立しその詳細を発表した (Yamamoto and Abe STAR Protocols 2022)。さらに,この手法を改変し,次世代シーケンサーに対応した計測システムを開発するとともに,単一細胞レベルでの転写因子活性測定のための技術開発を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度,マウス生体脳内の特定の細胞集団の内在転写因子活性を細胞腫特異的に定量評価することを可能にする実験技術を確立しその詳細を発表した (Yamamoto and Abe STAR Protocols 2022)。この技術において,生体組織内において単一細胞での転写因子活性測定が可能であることを確認した。一方で現手法では多数の転写因子活性を同一細胞において観察することや,ハイスループットに転写因子活性を測定することは困難である。そのため,現手法を発展させ,生体内の単一細胞での転写因子活性測定のための技術開発を行った。次世代シーケンサーによるレポーター遺伝子の発現解析が可能なように,転写因子活性測定レポーターベクターの構成を見直した。改変したベクターにおいて次世代シーケンサーでの細胞集団のRNAシーケンスを試行し,転写因子活性測定がこれまでと遜色なく可能であることを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,旧型のコンストラクトを用いて,マウスでの学習に応じた転写因子活性変化を生体内の単一細胞レベルの解析にて明らかにする。このため,旧型ウイルスベクターをマウス海馬に発現させ,記憶学習課題を科した後に組織切片を作成し特定の転写因子の活性化が起こる細胞の分布やそのアイデンティティを明らかにする。並行して,昨年度までに改良したハイスループット解析のための新型の転写因子活性測定ベクターをマウスに発現させ,単一核シーケンスを実行することで生体内単一核での複数の転写因子活性測定を実行する。また,単一細胞での転写因子活性と同時にその細胞のトランスクリプトームを取得することができるので,単一細胞での特定の転写因子活性とその細胞での遺伝子発現パターンとの関わりを解析し,単一細胞でのマルチオミクス解析を実施する。また,単一細胞での解析を実施することで,特定の転写因子活性の変化が起こりやすい細胞集団を遺伝子発現パターンから同定し,それらが記憶学習や病態,発達などの過程に果たす役割について,ChR2やDREADDの発現による神経活動操作や,ターゲットとなる転写因子の機能阻害型コンストラクトの得的発現などの手法を用いて実験的に明らかにする。
|