2022 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスによる自閉症の神経回路形成メカニズムの解明と治療応用
Publicly Offered Research
Project Area | Census-based biomechanism of circuit construction and transition for adaptive brain functions |
Project/Area Number |
22H05493
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川村 敦生 金沢大学, 医学系, 助教 (40898087)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / モデルマウス / クロマチンリモデリング / 神経回路 / 最初期遺伝子 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経発生は時空間的に精密に制御されているが、その破綻は不完全な神経回路形成を引き起こし、自閉症などの精神疾患の発症に寄与することが示唆されている。近年、クロマチンリモデリング因子CHD8が最も有力な自閉症原因候補遺伝子として同定され、世界中で大きな反響を呼んでいる。われわれはヒト自閉症患者のCHD8変異を再現したモデルマウスを作製し、このマウスが自閉症様の行動異常を再現することを確認した。さらに、このマウスにおいて神経発生や神経回路に異常が生じていることを実証している。そこで本研究では、この自閉症モデルマウスを用いて脳発達過程におけるどのような異常が後の神経回路構築に影響を与えているかを明らかにすると共に、その神経回路の変化と自閉症様行動との関連性を検証することによって、自閉症の病態解明と治療応用を目指す。 まずは自閉症発生時期を明らかにするために、胎生早期から成体期にかけて、時期特異的にCHD8をヘテロ欠損させたマウスで行動解析を行い、自閉症様行動の出現する時期の検討を行った。その結果、自閉症の発症に重要な神経発生の時期を特定することに成功した。さらに、レポーターマウスを用いて行動異常の原因となる発生時期に分化した細胞のラベルを行った。ラベルされた細胞の脳内での局在や細胞種(興奮性/抑制性ニューロン、グリア細胞など)についての解析を行った。また、成体期にCHD8をホモ欠損させたマウスの行動解析を行ったところ、一部の試験において行動異常が観察された。このマウスを用いた解析から、CHD8が神経活動に応じて発現誘導される最初期遺伝子の転写を調節していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自閉症の発症に重要な神経発生の時期を特定し、その時期に発生する細胞の解析を進められていることから、当初の予定通りに計画が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
自閉症発生に関わる細胞群を単離して遺伝子発現解析を行い、これらの細胞群が成熟した脳内において神経機能や回路形成に与える影響を明らかにする。また、変化が見られた脳領域に着目して神経活動の記録や操作を行うことで、自閉症様の行動異常との関連性を明らかにする。
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