2022 Fiscal Year Annual Research Report
分化状態の細胞間格差プロファイリングによる適応回路構築機構の解読
Publicly Offered Research
Project Area | Census-based biomechanism of circuit construction and transition for adaptive brain functions |
Project/Area Number |
22H05518
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
中川 直樹 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30835426)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 神経回路再編 / 分化不均一性 / シングルセルRNA-seq / バレル皮質 / 生後発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生後発達期の大脳皮質における神経回路再編を制御する分子機構の解明を目的として行う。生後発達初期のマウス体性感覚野神経細胞から、分化パラメータとトランスクリプトームを同時に取得し、相関解析を行うことで、神経細胞の形態・機能分化に関与する遺伝子を高精度で絞り込む。その後、得られた候補遺伝子の機能解析によって、体性感覚回路構築の分子機構を明らかにすることを目指す。 本年度は、個々の神経細胞の分化状態を対応づけたトランスクリプトーム解析手法の構築を目標とした。本手法の実現のため、(1)組織切片からの単一細胞の切り出し方法、および(2)パラホルムアルデヒド(PFA)固定後の組織片からのRNA調製方法、についての条件検討を行った。まず(1)について、PFA固定したマウス脳切片から、蛍光標識した神経細胞をレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)を用いて単一細胞レベルで切り出すための条件検討を進めた。PFA固定の時間、脳切片の厚さ、細胞標識に使用する蛍光タンパク質、LCMのレーザー強度などについて検討を行った。次に(2)について、PFA固定後の脳組織からRNA-seqで解析可能な品質のRNAを調製するための手法について検討した。一般的にPFAを用いた組織固定処理はRNA品質低下の原因となると考えられている。そこで、PFA固定後の脳切片からLCMで切り出した組織サンプルを用いて、市販のRNA調製キット中心に数種のプロトコルを比較検討し、最適なRNA抽出手法の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LCMを用いた単一細胞の切り出し、および切り出した組織片からのRNA抽出について、実験条件は定まってきてはいるものの、当初目標としていたトランスクリプトーム解析手法の確立には至らなかったことから、やや遅れていると判断した。次年度の早期に本手法の完成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞の分化状態を対応づけたトランスクリプトーム解析手法の完成を目指して、単一細胞の切り出し工程と、切り出した細胞からのRNA抽出工程にさらに改善を加える。その後、抽出したRNAを用いて実際にRNA-seqを行い、得られるシークエンスデータの品質を検証する。本手法が完成し次第、神経細胞の発火特性や樹状突起形態などの分化パラメータとトランスクリプトームとの同時取得実験を行い、発達期神経細胞の形態的・機能的分化に関与する遺伝子の絞り込みと、その後の候補遺伝子の機能解析へと進める。
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