2022 Fiscal Year Annual Research Report
液-液相分離を制御する非ドメイン型タンパク質の探索と単分子機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Biology of Non-domain Biopolymer |
Project/Area Number |
22H05582
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鎌形 清人 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90432492)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 液液相分離 / 非ドメイン型タンパク質 / 予測 / 光ピンセット |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞中には、液-液相分離によって生じる膜のない小器官が存在する。細胞内に含まれる分子Xによって膜のない小器官は制御されていると考えられる。本研究では、アミノ酸ペアの結合エネルギーの計算法を用いて、機能未知の非ドメイン型タンパク質の中から、液-液相分離するタンパク質に結合し、この液-液相分離状態の形成を制御するものを予測し見つけ出すことを目的とした。また、光ピンセット顕微鏡、単分子蛍光顕微鏡、分子動力学シミュレーションを組み合わせ、この液-液相分離の促進・消失のメカニズムの解明も目的とした。 当該年度は、まず、アミノ酸ペアの結合エネルギーの計算法を用いて、機能未知の非ドメイン型タンパク質の中から、液-液相分離するタンパク質に結合し、この液-液相分離状態の形成を制御するものを予測するプログラムを作成した。このプログラムを用いて、液-液相分離状態に取り込まれるタンパク質の実験データを再現できるかを確認したところ、その精度が低いことが分かった。 次に、相分離状態の制御のメカニズムを明らかにするには、相分離内部での分子間相互作用を計測する必要がある。そこで、相分離状態を力学的に計測できる、光ピンセット顕微鏡を作製した。この光ピンセット顕微鏡に、赤外レーザーを用いてビーズを補足できる光学系を組み込んだ。また、相分離タンパク質の相分離状態(液滴)とビーズを2色の蛍光で検出できる光学系も組み込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の想定に反して、非ドメイン型タンパク質を推定する計算プログラムの開発では、その推定精度が低く、その精度を上げるためにはより多くの条件をテストする必要があり、その実験的検証を延期せざる得ないことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
【非ドメイン型タンパク質の推定】非ドメイン型タンパク質を推定する計算プログラムの開発では、その推定精度が低いことが分かったため、その精度を上げるように計算プログラムを改良する。 【開発した光ピンセット顕微鏡による相分離状態の力学計測】まず、上記の計算プログラムで推定した非ドメイン型タンパク質(蛍光修飾)及び相分離タンパク質を大腸菌で発現し、液体クロマトグラフィーで精製する。次に、相分離タンパク質および非ドメイン型タンパク質を、直鎖状高分子PEGを介してビーズに連結する。続いて、当該年度に開発した光ピンセット顕微鏡を用いて、相分離状態内でビーズに連結したタンパク質分子を一方向に引っ張りながら、分子にかかる力を計測する。特に、同定した非ドメイン型タンパク質が相分離タンパク質と結合する力や、相分離タンパク質間の結合力に与える影響に着目し、調べる。 【相分離状態内での分子の動きの単分子蛍光計測】単分子蛍光顕微鏡を用いて、相分離状態内での相分離タンパク質や非ドメイン型タンパク質の動きを計測する。斜光照明と呼ばれるシート状の照明を用いて、単分子レベルでの計測を行う。相分離タンパク質間の結合力と分子の動きの結果を統合し、その関連性を明らかにする。 【粗視化分子動力学シミュレーションによる相分離状態内の分子間相互作用解析】スーパーコンピューター上に相分離タンパク質の相分離状態を再現し、その中で非ドメイン型タンパク質が周りの相分離タンパク質と結合し、相分離タンパク質間の相互作用に与える影響を調べる。この解析結果と上記の実験結果から、非ドメイン型タンパク質による相分離状態の制御メカニズムを提案する。
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