2022 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖ノンコーディングRNAのメチル化による天然変性蛋白質の凝集抑制の分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Biology of Non-domain Biopolymer |
Project/Area Number |
22H05596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 非コードRNA / アデニンメチル化 / FUS / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然変性タンパク質であるFUS (fused in sarcoma)は、癌や筋委縮性側索硬化症(ALS)等に関連する。また環境に依存して、液液相分離を生じたり凝集体を形成する。FUSと結合して生理的な機能を発揮する長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が見出された。このlncRNAの断片であるFragment 6 (Fr6)は、断片中のアデニン塩基の6位がメチル(m6A)化されるとFUSへの結合能が高まり、FUSの凝集を阻害する事が報告された。この凝集阻害効果は、細胞のストレス耐性とバイアビリティの向上をもたらした。 Fr6に関し、m6A化された際とそうでない際の2次構造の予測を行った。また、Fr6及びm6A化されたFr6のNMRスペクトル測定し、塩基対の形成の状況に関する知見を得た。さらにFr6及びm6A化されたFr6に関して、UVスペクトルを用いた熱融解実験を行い、熱安定性を解析した。これらの項目に関して、m6A化の有無で大きな違いは見られなかった。m6A化は、FUSとの相互作用において違いを生じるものと推定される。 Fr6の構造とダイナミクス及びFUSとの相互作用を生細胞内でインセルNMR法で解析するには、目的のRNAを安価に13C,15N標識する技術を確立する事が必要となる。大腸菌の大量発現系を利用して、目的のRNA配列の両端にハンマーヘッド型リボザイムの配列を付加し、これをtRNAのクローバーリーフ構造に組み込んだものが大腸菌内に蓄積するシステムを構築した。大腸菌を13C,15N標識した最小培地で培養し、得られたRNAを精製し、ここにマグネシウムイオンを加えてハンマーヘッド型リボザイムによる切断を活性化する事で、13C,15N標識した目的のRNAを取得する事に成功した。本手法は、本研究のみならず、他の研究でも活用できる方法論である。また、インセルNMR法によって核酸塩基のダイナミクスを解析する方法論を確立する事にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
m6A化の有無が、Fr6の構造と熱安定性に及ぼす影響を2次構造予測ソフト、NMRスペクトル及びUVスペクトルを用いた熱融解実験によって検証する事ができた。 Fr6の構造とダイナミクス及びFUSとの相互作用を生細胞内でインセルNMR法で解析するには、目的のRNAを安価に13C,15N標識する技術を確立する事が必要となる。今回、大腸菌の大量発現系とリボザイムによる切断反応を組み合わせる事で、この技術を確立する事に成功した。また、核酸塩基のダイナミクスをインセルNMR法によって解析する方法論の確立にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
m6A化の有無が、Fr6単独の構造と熱安定性に及ぼす効果の解析は終了したので、m6A化の有無がFUSとの相互作用に及ぼす効果を今後は解析する。 目的のRNAを安価に13C,15N標識する技術を確立したので、これを生かしてインセルNMR法によるFr6の構造、ダイナミクス及びFUSとの相互作用の解析を行う。
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Research Products
(5 results)