2022 Fiscal Year Annual Research Report
セントロメア微小環境の形成における非ドメイン型RNAの機能
Publicly Offered Research
Project Area | Biology of Non-domain Biopolymer |
Project/Area Number |
22H05608
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | クロマチン / RNA / セントロメア / Aurora B |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、クロマチン分子として知られるHP1は、分裂期のセントロメアにおいて、正確な染色体分配に必須なAurora Bキナーゼを含む染色体パッセンジャー複合体 (CPC)に結合し、その機能を制御することを明らかにしてきた。さらなる解析から、クロマチン分子として知られるHP1が転写依存的に分裂期のセントロメアに局在することを見出した。これらを踏まえて令和4年度は、HP1に着目し、HP1のセントロメア微小環境の形成における役割と、HP1とRNAとの関係について検討した。 1) オーキシン・デグロンシステムを用いて、HP1を急速に分解できるヒト培養細胞を作製し、HP1を分解した時のCPCの機能や局在を解析した。その結果、HP1の分解により、Aurora Bの基質である動原体タンパク質のリン酸化の程度が顕著に低下したことに加え、CPCの構成タンパク質であるINCENPの局在もまた有意に減弱した。これらの結果から、HP1はCPCのセントロメアへの濃縮を促進する役割を持つことが示唆された。 2) HP1のセントロメア局在にRNAが直接的に寄与するかどうかを明らかにするために、分裂期の細胞に対してRNase A処理を行った。その結果、HP1だけでなくCPCのセントロメア局在は減弱した。この結果は、オーキシン・デグロンシステムを用いてHP1を分解した時の観察結果とよく一致する。また、HP1の減弱の程度は、CPCと比較してより顕著であった。これらの結果から、RNAは、Aurora Bキナーゼが機能する微小環境の重要な構成分子であり、特にHP1のセントロメア局在に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーキシン・デグロンシステムを導入することで、細胞内のHP1を30分以内に検出限界以下まで分解することが可能となり、これまでは困難であった分裂期特異的なHP1の機能解析を進めることができたため。また、セントロメア微小環境の形成におけるRNAの役割の一端が見えてきており、どのようなRNAが寄与するのかを明らかにすることで、セントロメアの機能制御を理解するための新たな足掛かりが得られると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
どのようなRNAがHP1のセントロメア局在に寄与するのか、そのRNAを同定することを試みる。同定された標的RNAについて、細胞周期における発現制御や局在観察を進める。加えて、がん細胞ではHP1のセントロメア局在が損なわれているため、がん細胞での標的RNAの制御についての解析も併せて進めたい。
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