2022 Fiscal Year Annual Research Report
造血の加齢変化における幹細胞競合パラドックスの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding multicellular autonomy by competitive cell-cell communications |
Project/Area Number |
22H05622
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田所 優子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (00447343)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
Keywords | 細胞競合 / 造血幹細胞 / ニッチ / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞は、微小環境(ニッチ)内において互いに競合状態にあり、自律的に造血の恒常性を維持している。この「幹細胞競合による組織の最適化」は、ライフステージにより変化すると考えられるが、その実態については理解されていない。最近我々は、加齢に伴って現れる異質な造血幹細胞がニッチを変化させることによって適応度を増し、造血幹細胞エイジングが進展することを見出した。本研究では、組織の最適化に反した造血老化の進展に寄与する幹細胞競合パラドックスを理解し、その分子機構を解明することを目標とする。具体的には、成熟期から老齢期における造血幹細胞の変化に焦点を当て、造血幹細胞エイジングの進展に寄与する“ニッチ変容を介した幹細胞競合の分子機構”を明らかにする。さらに、競合的コミュニケーションを司る環境因子による、幹細胞競合制御機構を解明する。幹細胞競合を制御する環境因子を特定し、競合的コミュニケーションを変化させることにより造血幹細胞エイジングの制御を目指す。 令和4年度は、造血幹細胞エイジングの進展に寄与する幹細胞競合について、ニッチ変容を切り口にFoxp3DTRマウス(Treg除去)・Ifng欠損マウス・Il17a欠損マウスにおける造血幹細胞の加齢変化について解析を行った。その結果、Treg・IFNγ・IL-17Aのバランスが幹細胞競合を介した造血幹細胞エイジングの進展制御に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、経時的に骨髄細胞のシングルセルRNA-seq解析を行った。ライフステージよって変化する幹細胞競合制御メカニズムを解明するために、現在詳細な解析を進めている。また、造血幹細胞がヘルパーT細胞ニッチを変え得るかどうかを明らかにするために共培養を行い、造血幹細胞はナイーブヘルパーT細胞を活性化出来ることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、解析マウスの準備も進み、一定の解析結果が得られた。その結果、Treg, IFNγ, IL-17Aによるニッチ変容の幹細胞競合を介した造血幹細胞エイジングにおける役割を明らかにすることが出来た。また、腸内細菌由来代謝物による幹細胞競合制御機構を明らかにするために、in vitro添加、in vivo投与による検証も進めおり、データが得られ始めている。よって、当初の計画がおおむね達成されており、総じて順調に進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、クローン性造血をモデルとした幹細胞競合と造血幹細胞エイジングの進展機構の解明にも着手するため、モデルマウスの作製を進める。また、競合的コミュニケーション分子探索のために、プロテオーム解析を進めていく。さらに、ニッチ環境を変化させることにより、幹細胞競合関係や造血幹細胞の加齢変化を改善することが出来るかどうかの検証に取り組む。
|