2022 Fiscal Year Annual Research Report
体外胚培養システムの構築による哺乳類器官形成期の組織自律性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Understanding multicellular autonomy by competitive cell-cell communications |
Project/Area Number |
22H05635
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
諸石 寿朗 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30647722)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 器官形成 / 体外胚培養 / Hippoシグナル / 組織の自律性 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物の器官形成においては多くの細胞が増殖・分化・死を適切に選択し、協調して複雑な組織を構築していく。この劇的な動態変化において組織の自律性が保たれる仕組みは大きな謎となっているが、哺乳動物は子宮内で発育するためその解析は容易ではない。そこで、本研究では、マウス体外胚培養システムを構築することによりこの課題を克服し、さらに、哺乳類の器官形成において重要な役割を担うHippo細胞内シグナルの遺伝子改変マウスを利用することにより、哺乳類の器官形成において組織の自律性を支える仕組みの解明をめざして研究を進めてきた。 まず、マウス体外胚培養システムについて過去の文献を参考に培養機器を設計した。培養系にかかる圧力の厳密なコントロールを可能にするため、圧力のモニター系とフィードバックシステムを培養装置に組み込み、供給酸素濃度を極限まで高められるようにガス制御板を改良した。作製した体外胚培養機器を用い、マウス胎仔の胎生7.5日目からの子宮外胎仔培養を実施し、子宮内で発育したマウス胎仔と比較解析を重ねることにより、胎生7.5日目から胎生10.5日目付近まで子宮外で胎仔を培養できる方法を準備した。また、体外培養系においてマウス胎仔にHippo経路の散在的な変異を導入するため、Hippo経路に関連する遺伝子の変異マウスや遺伝子欠損を起こした細胞を蛍光分子で標識できるマウスを交配し、今後の実験に必要な遺伝子変異マウスを作出した。 以上の研究成果をふまえ、対外培養系の構築やHippo経路の生理機能について学会発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では哺乳動物の器官形成における組織の自律性を支える仕組みを、Hippo経路の不均一性が誘導する細胞間の競合的コミュニケーションを手がかりに理解することをめざし、「A. マウス体外胚培養システムの構築」、「B. Hippo経路のもたらす器官形成期の競合的コミュニケーションの実態解明」に取り組んできた。 A.については、過去の文献を参考に体外胚培養機器を設計した。予備的な検討から、培養系にかかる圧力の厳密なコントロール、および、供給酸素濃度を高める仕組み、の構築が必要であると考えられたため、これらについて改良した設計とした。作製した体外胚培養機器を用い、マウス胎仔のE7.5からの子宮外胎仔培養を実施した。培養後のマウス胎仔と子宮内で発育したマウス胎仔を組織学的手法により比較検討し、発生の違いを検証した。こられの結果を培養プロトコル改良にフィードバックし、E7.5からE10.5付近まで子宮外で胎仔を培養できる方法をセットアップした。 B.については、Hippo経路に関連する遺伝子のFloxマウス、および、遺伝子欠損を起こした細胞を蛍光分子tdTomatoで標識できるR26R-tdTomatoマウスを利用し、解析のための遺伝子改変マウスを作出した。当初はアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた手法によりCre遺伝子を解析対象組織に散発的に導入する予定であったが、感染効率や発育への影響等の問題から断念し、タモキシフェン誘導性(CAG-Cre-ER)のCre遺伝子導入により子宮外で培養したマウス胎仔に散発的なHippo経路の遺伝子変異を導入することとした。そこで、そのための遺伝子変異マウスを作出した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目ごとに以下の計画を進める。 A) マウス体外胚培養システムを構築する 昨年度の研究で作成した体外胚培養機器を用い、E7.5からE11までの体外胚培養を効率的に実施する。また、E11以降の体外胚培養を実現 するため、E9.5から高酸素・高栄養条件下で体外胚培養を行い、胎児の代謝や酸素供給状況を調べながらプロトコルの改良を進める。 B) Hippo経路のもたらす器官形成期の競合的コミュニケーションを理解する 昨年度までの研究でタモキシフェン誘導性に散発的なHippo経路の遺伝子変異を導入できるマウスを準備しており、今後はこれらのマウスを用いで低容量タモキシフェン存在下で散発的Hippo変異を導入する。このマウス胎仔を体外胚培養システムで培養し、1つの細胞におけるHippo経路の変化が周辺細胞に及ぼす影響を調べ、哺乳動物における器官形成期の競合的コミュニケーションを探求する。細胞競合の現象が認められた場合は、Hippo変異細胞の周囲細胞において細胞競合関連シグナルの変化を観察し、その分子基盤を理解する。 以上の方策を通じて、哺乳動物の器官形成において組織の自律性を支える仕組みを調べる。
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Research Products
(3 results)