2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structural and molecular basis for the behavioral changes during the colonial-individual conversion of sperms in volvocine green algae
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced mechanics of cell behavior shapes formal algorithm of protozoan smartness awoken in giorama conditions. |
Project/Area Number |
22H05692
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
豊岡 博子 法政大学, 生命科学部, 助手 (00442997)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 精子 / 鞭毛運動 / ボルボックス系列 / ユードリナ / 鞭毛基部体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、緑藻ボルボックス系列の受精で見られる、オス側の配偶子が集団(精子束)から独立した細胞(精子)へ体制転換するシステムを、確実に受精を達成するための卓越した原生知能システムと捉え、この現象の実態とその基盤となる細胞構造・分子機構を解明することを目的としている。研究代表者らはこれまでに、ボルボックス系列緑藻のユードリナにおいて、性フェロモン投与によって集団型精子(精子束)を効率よく得る実験系を確立した。2022年度に、これまで使用していたユードリナ雄株において集団型精子の形成効率の低下がみられたため、交配によって新規株を作製し、集団型精子を安定的に得る実験系を再整備した。得られた集団型精子に対して、雄株と雌株を混合して接合を誘導した際の培養上清を投与したところ、10-40分後に解離が誘導できることが分かった。本研究ではこの現象を、精子の集団-独立体制転換を人為的に誘導する実験系として活用した。得られた集団型および独立型精子の鞭毛運動を、高速度カメラを用いて観察した結果、集団型精子の鞭毛は非対称型の運動波形を示すのに対し、独立型精子の鞭毛は対称型の運動波形を示すことが分かった。さらに独立型精子では、時間経過に伴って鞭毛打の方向を前方から後方へと変化させる様子が観察された。そのため独立型精子の前進遊泳は、これらの2段階の鞭毛打の変化を経ることによって可能になることが示唆された。 今後、ユードリナ精子の集団-独立体制転換に伴う鞭毛の運動波形や打方向の変化の過程を詳細に解析することで、この現象を明確化する。またこの現象の細胞基盤を明らかにするため、鞭毛基部体等の細胞構造の比較解析を併せて進める。これらの解析により、ボルボックス系列緑藻が受精に際して発揮する原生知能システムの実態とその仕組みが明らかになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまず、これまで使用していたユードリナ雄株の集団型精子(精子束)形成効率が長期間の継代培養によって低下したため、交配によって新規株を作製し、性フェロモン投与によって集団型精子を安定的に得る実験系を再整備した。得られた集団型精子を正の走光性によって集め、雄株と雌株を混合して接合を誘導した際の培養上清を投与することによって、集団-独立体制転換を誘導する実験系を確立した。これらの実験系を用い、集団型および独立型精子の鞭毛運動を高速度カメラを用いて観察した。その結果、集団型精子の鞭毛は非対称型の運動波形を示すのに対し、独立型精子の鞭毛は対称型の運動波形を示した。さらに独立型精子では、時間経過に伴って鞭毛打の方向を前方から後方へと変化させる様子が観察された。 以上のように本研究は、研究開始時に生物材料の準備に問題が生じたものの、当初の計画通りにユードリナ精子における集団-独立体制転換の人為的誘導系の確立に成功し、この体制転換に伴う鞭毛運動の変化を明確にできたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のこれまでの成果により、ユードリナ精子においては集団-独立体制転換に伴って鞭毛の運動波形や打方向が変化することが示唆されている。そこで2023年度は、この鞭毛運動の変化の過程を詳細に解析する。具体的には、1)集団型精子鞭毛でみられる非対称型波形が、どのような過程を経て独立型精子鞭毛でみられる対称型波形に転換するのか、2)独立型精子において、どのように鞭毛打の方向が変化するのか、に着目して解析する。 また独立型精子において鞭毛打方向の変化が観察されていることから、集団-独立体制転換に伴って鞭毛基部体の配向が変化することが示唆される。そこで、集団型および独立型精子の鞭毛基部体を、抗クラミドモナスSAS-6抗体を用いた間接蛍光抗体法により可視化し、その配向の比較解析を行う。また透過型電子顕微鏡法により鞭毛基部体を直接観察する。 これらの解析を併せて進めることで、ユードリナ精子鞭毛の集団-独立体制転換に伴う運動変化の実態とその細胞構造上の基盤を明らかにする。
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