2022 Fiscal Year Annual Research Report
Socio-Eco-Evo interplays: spatiotemporal dynamics in adaptive traits with environemtal DNA
Publicly Offered Research
Project Area | Digital biosphere: integrated biospheric science for mitigating global environment change |
Project/Area Number |
22H05703
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内海 俊介 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10642019)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 都市進化 / 環境DNA / 生態-進化動態 / メタバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、都市環境の変化が、多くの生物種の進化に影響を与えることが示されてきている。しかし、それらの研究は、都市と郊外の二項対立的な比較研究がほとんどである。実際には、都市と郊外の環境勾配に沿って、さまざまな環境変数が非直線的かつ不連続に変化しており、そのような都市環境が進化の過程や結果にどのような影響を与えるかについては、まだ実態は解明されていない。ここでは、都市部と農村部の両方で生育する草本植物シロツメクサにおけるシアン化水素(HCN)産生とその構成要素(シアン配糖体と加水分解酵素の有無)の進化に注目した。植物がどのように進化し、不均質な都市環境に適応するのかを包括的に解明するため、札幌および周辺地域からシロツメクサを収集し、それぞれの採取地点における被食圧、開空度、不浸透面、積雪深、気温などの環境要因と、これらの要因の変動がHCN、シアン配糖体、リナマラーゼの産生とどのように関連しているかを景観アプローチによって調べた。これらのうち、被食圧と開空度、および不浸透面は、個体群におけるHCN産生型の頻度に大きく関連していた。また、不浸透面はシアン配糖体の産生型の頻度に関係しており、シアン配糖体の生成遺伝子頻度は、都市-p郊外勾配に沿って明確な空間分布傾向を示した。一方で、HCN生成についてはより複雑な空間分布となることがわかった。さらに、このアプローチを他都市に拡張した。一方、環境DNAによる生態-進化動態に関するモニタリング技術開発が進展した。室内環境でハムシにヤナギを摂食させた後、そのヤナギに付着した環境DNAを採取し、形質に関連する遺伝子マーカーにおける一塩基多型頻度を調べることができるか検証した。その結果、環境DNAから遺伝子頻度の推定ができることがわかった。同時に、この環境DNAを用いて、ヤナギ上に存在する節足動物をターゲットとするメタバーコーディングも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数都市での景観アプローチによる遺伝子の空間マッピングが実施でき、環境DNAによる生態-進化動態に関するデータ取得に関する重要な技術開発に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
シロツメクサの都市進化に関する空間動態についての十分な知見が得られたため、次年度は生態系機能への波及効果について検証していく。特に、訪花昆虫の行動に対する影響について調べていく。また、2022年度に環境DNAによる調査技術の開発に目途が立ったことから、23年度は実際に野外で遺伝子頻度と群集構造の同時観測を高頻度で実施、生態-進化動態の実態について環境DNA技術によって迫っていく。
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