2022 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスを捉えて生物圏機能を根底から理解する―革新的メタゲノム解析技術の開発―
Publicly Offered Research
Project Area | Digital biosphere: integrated biospheric science for mitigating global environment change |
Project/Area Number |
22H05714
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
西村 陽介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), 特任研究員 (90718959)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | メタゲノム / ウイルス / 環境微生物 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物と、微生物に感染するウイルスの活動は生物圏を根底から制御しており、炭素・窒素等の物質循環を司ることで、海洋や土壌における生物圏機能に大きな影響を与えている。しかしながら、環境微生物に関する知見は圧倒的に不足しており、「ダークマター」と呼称される未培養の微生物やウイルスが多くを占める。特に、ウイルスの情報解析技術は未発達であり、環境に存在するウイルスの実態は謎に包まれている。本研究は環境におけるウイルスの活動実態を解明するために、ウイルスゲノム解析のための情報解析手法を開発する。その手法を環境横断的なメタゲノム・ビッグデータに適用することで、それぞれの環境に存在するウイルスゲノムを大規模に解読し、ウイルスの宿主や活動を解明する手がかりとなる情報を整備し、ウイルスが果たす生物圏機能の解明に貢献する。 本年度は、公共データベースから環境横断的な大規模メタゲノムデータ(約100兆塩基)を取得し、配列アセンブリや、ウイルスゲノムの同定を行った。解析ツールを使用してウイルスゲノムを探索したところ、全6億の配列から、ウイルスゲノムと推定されるものが1600万検出され、うち7万が完全長ゲノムであった。 検出されたウイルスゲノムを特徴づけるため、相同遺伝子データ(KEGG KOやPfamなど)を活用したゲノム解析ツールを開発し、代謝遺伝子を網羅的に同定するための解析パイプラインを構築した。また、各メタゲノムの由来となる環境の情報についても整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境横断的な大規模メタゲノムデータ(約100兆塩基)から1600万ものウイルスゲノムと推定される配列が得られ、海洋・土壌といった様々な環境に存在するウイルスを特徴づけるための土台が整った。また、それぞれのゲノムに含まれる代謝遺伝子を特徴づけるためのゲノム解析パイプラインの開発が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ウイルスに含まれる代謝遺伝子の網羅的な系統解析を行い、それぞれの遺伝子の進化的な起源を明らかにすることで、ウイルスの新しい宿主予測手法を確立する。また、ウイルスが持つ代謝遺伝子を環境ごとに整理し、「ホットスポット」となっている環境を明らかにすることで、「ウイルス」と「環境」の関係性を代謝レベルで理解する。
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