2022 Fiscal Year Annual Research Report
BVOC mediated plant microbe interactions in phyllosphere
Publicly Offered Research
Project Area | Digital biosphere: integrated biospheric science for mitigating global environment change |
Project/Area Number |
22H05715
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲山 哲生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50793379)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 葉圏微生物 / 生物期限揮発性有機化合物 / 種内変異 / 植物-微生物相互作用 / スギ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が放出する生物起源揮発性有機化合物(BVOC)と葉圏微生物の相互作用を明らかにすることは、陸域生物圏から大気へのBVOC放出を介した気候変動への影響を評価・予測する上で重要である。本研究では、化学分析とメタゲノム解析、共通圃場実験、環境操作実験を組み合わせて、進化生態学的な観点からBVOC放出を介した植物-葉圏微生物相互作用を解明することを目的とする。昨年度は、筑波大学構内の共通圃場で栽培されているスギ個体を用いて、スギの葉から放出されるBVOCの測定および葉圏微生物のメタゲノム解析のための手法の検討を行った。BVOCの測定では、これまで用いられてきた枝チャンバー法を改良し、枝を囲うテフロンバックの取り付け方法を工夫することで測定にかかる時間を短縮化したほか、ガスのサンプリングの際に用いる空気を、圧縮空気ボンベの代わりに外気を用いることで、より自然に近い条件下でBVOCを測定する手法を開発した。新手法を用いて、3集団(屋久島、安蔵寺、鰺ヶ沢)由来の栽培個体について、BVOCを測定した結果、先行研究(Hiura et al. 2021)と同様にBVOCの放出量と組成には集団間で差が認められたが、一方で、同一集団内の個体間でも大きな差があることが分かった。また、葉圏微生物の解析では、葉表層の微生物のDNAを効率的に抽出するために、Suda et al. (2008)による塩化ベンジルを用いた抽出法を試し、16S rRNA領域のPCR増副産物について、アンプリコンシーケンス解析を行った。その結果、スギ葉圏ではメチロバクテリウム属やスフィンゴモナス属の細菌が優占していることが明らかとなった。また、共通圃場の栽培個体であるにもかかわらず、異なる地域集団に由来する個体間では葉圏微生物の群集組成が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的であるBVOC放出を介した植物-葉圏微生物相互作用の解明に向け、BVOC測定手法と、DNAシーケンシングによる葉圏微生物の網羅的解析手法を確立することができた。また、当初の予想通り、共通圃場においても異なる地域集団に由来する個体間ではBVOCの放出特性や微生物組成が異なっていたことから、今後継続調査を行うことで、両者の関係について解明が進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに確立した手法を用いて、共通圃場栽培個体の継続的な調査を行い、BVOCの放出量と葉圏微生物の季節変化モニタリングを行う予定である。また、共通圃場において昨年9月から実施している降雨遮断処理個体との比較により、乾燥ストレスがBVOC放出と葉圏微生物の相互作用に与える影響を明らかにする。加えて、野外の環境勾配に沿った葉圏微生物群集の変化を解明するため、富山県の立山において標高傾度に沿ってスギの葉のサンプリングを行うほか、筑波大学の共通圃場と同じ個体のクローンが栽培されている、東北大学の川渡フィールドセンター内の共通圃場でもサンプリングを行い、メタゲノム解析によって地域間での葉圏微生物の組成を比較する予定である。 今回用いた微生物DNA抽出方法では、宿主であるスギのオルガネラゲノムDNAのコンタミネーションがある程度の割合で検出されたため、他のDNA抽出法についても検討中である。また、メタゲノム解析では、細菌類をターゲットとした16S rRNA領域に加えて、真菌類をターゲットとしたITS領域の解析も行う。
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Research Products
(1 results)