2022 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化は土壌の炭素貯留能を低下させるか?放射性炭素を利用したアプローチ
Publicly Offered Research
Project Area | Digital biosphere: integrated biospheric science for mitigating global environment change |
Project/Area Number |
22H05736
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
安藤 麻里子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (20354855)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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Keywords | 微生物呼吸 / 放射性炭素 / 森林土壌 / 温暖化操作実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林土壌には数百年から数千年以上の長期間安定に存在する有機物が存在している。地球温暖化の影響で長期間滞留している土壌有機物の分解が加速し二酸化炭素として放出されれば、地球の炭素循環のバランスが崩れる可能性がある。本研究では温暖化操作実験を10年以上実施している日本国内の森林で微生物呼吸(土壌有機物の微生物分解により放出される二酸化炭素)の放射性炭素同位体比を測定し、その炭素年代を調べるとともに、温暖化操作による微生物呼吸起源の変化を明らかにすることを目的とした。令和4年度は宮崎県と広島県の森林において、 (1)根切区、(2)温暖化区、(3)根切区+表層リター除去、(4)温暖化区+表層リター除去、の4つの状態で微生物呼吸を採取した。根切区及び温暖化区はどちらも微生物呼吸採取用チャンバーの周辺を根切りして根呼吸の影響を排除している。また、温暖化操作実験による温暖化効果(温暖化1℃あたりの微生物呼吸速度の増加率)が他のサイトよりも数倍高かった北海道の森林で、季節毎に微生物呼吸を採取し、地下水位と微生物呼吸の炭素年代の関係を調査した。採取した試料は二酸化炭素の精製処理を行い、一部の試料については放射性炭素同位体比を測定した。これまでに得られている測定結果より、宮崎と広島のサイトでは、微生物呼吸の放射性炭素同位体比が表層リターの値に近く、数年で代謝回転する比較的新しい炭素が微生物呼吸の起源であることが明らかとなった。一方で、北海道のサイトでは微生物呼吸として数百年で代謝回転する古い炭素が放出されており、地下水位が上下することでその起源が変化している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、温暖化操作実験を実施している国内5サイトのうち3サイトで微生物呼吸試料を採取することができた。微生物呼吸試料の精製は順調に進み、放射性炭素同位体比測定も一部は終了している。それ以外の試料は測定装置(加速器質量分析装置)のマシンタイムの割り当てを待っている状態である。これまでに得られた結果を用いて微生物呼吸起源の推定も実施している。以上により、計画通り順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、残りの森林2ヶ所で試料を採取するとともに、微生物呼吸起源に数百年で代謝回転する古い炭素が使用されているという特異な結果を示した北海道のサイトで、その要因に解明するための調査をさらに進める予定である。今年度と同様に温暖化区及び根切区で微生物呼吸を採取し、実験室で二酸化炭素を精製して放射性炭素同位体比を測定する。また、各サイトで土壌断面調査を実施し、層毎に試料を採取して実験室に持ち帰り、土壌有機物の炭素同位体比測定を行う。得られた結果より微生物呼吸起源の推定を行い、温暖化による二酸化炭素起源の変化を評価する。研究成果は学会及び論文投稿で発表する。
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