2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経科学的アプローチによる倫理的行動モデルの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Experimental Social Sciences: Toward Experimentally-based New Social Sciences for the 21st Century |
Project/Area Number |
23011005
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 真希子 (独)放射線医学総合研究所, 分子イメージングセンター, 主任研究員 (50557444)
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Keywords | 神経倫理 / 神経科学 / 哲学 / fMRI / 共感 / 感情 |
Research Abstract |
本研究は、シミュレーションや公理論的でない倫理的状況を実存的に創り出し、潜在的・自動的メカニズムの観点から人の倫理的行動を神経科学的に解明することを目指す。行為の倫理性の判断について哲学の領域を超えて、神経科学的なアプローチを加えることで科学的に解釈を試み、科学的な解釈をすることで、ヒトの行為に対する倫理感についてモデル化する。神経科学による科学的根拠に基づいた行為の倫理性のモデルは、社会制度設計には重要とされるものであり、本研究は非常に独創的であり本領域に貢献できるであろうと考えられる。今回の研究では情状酌量に着目し、同情と量刑判断に関連する脳機能を探索した。被験者は、模擬裁判の裁判員として、被告人が犯罪行為に至った背景を基に量刑を決定するとともに、被告人に対してどの程度同情できるかを評定した。被告人が犯罪に至った背景に関する説明書を被験者に読んでもらい、そのときの被験者の脳活動をfMRIにより解析した。結果、被告人への同情と量刑判断は、他者理解や道徳的葛藤に関わる脳領域の働きであり、同情により刑を軽くしやすい人ほど島皮質の活動が高いことが判明した。2009年に裁判員制度が我が国において導入され、法律に基づき人を裁くことは、とても身近な話となった。今回の研究は、法律的判断の訓練を必ずしも十分には受けていない一般人の、裁判審理における情状酌量に関連する脳機能メカニズムを調べた世界で最初の研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、本研究の成果である情状酌量に関連する結果がすでにNature Communication誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に研究が進展しており、特段問題点などは発生していない。今後についてはこれまでの研究成果をより発展させ、倫理感とそのモデル化を目指した研究を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)