Research Abstract |
これまでの研究により, YABBY遺伝子ファミリーに属するTOB1が細胞非自律的にイネの小穂メリステムの維持制御に関わっていることが明らかになっている. 本年度は, TOB1と近縁なTOB2とTOB3を含め, これらの3つのYABBY遺伝子の機能解明を行った. まず, in situ hybridizationで空間的発現パターンを解析したところ, TOB2とTOB3は, 小穂メリステムから生じる側生器官で強く発現し, 小穂メリステムでは発現していないことが示された. これは, TOB1の発現パターンとよく一致しており, これ3つの遺伝子機能が類似していることを示唆している. 次に, 野生型において, TOB2とTOB3のノックダウンを行ったところ, ほとんど表現型が現れなかった. 一方, tob1変異体において, TOB2とTOB3をノックダウンしたところ, tob1変異を昂進することが示された. したがって, これら3つのTOB遺伝子は, 冗長的にはたらき, 側生器官で発現して細胞非自律的にメリステムの維持に関わっていると考えられる. 本研究は, 側生器官とメリステムとのコミュニケーションに, 新たな局面を切り開く研究として, 植物発生学の中で重要な位置を占めつつある. 雄ずいの向背軸極性の確立機構を解明する目的で, 低分子RNA (miRNA166やta-siARF RNAなど), 各種転写因子(OsETT, OsPHB, OsPRS, OsKAN)などの発現パターンを解析した. その結果, 向背軸極性の転換には, 転写制御, 転写後制御の両者が関わっていることが示唆された. また, 外穎頂端部に生じる芒の形成機構に関しても解析を行い, DROOPING LEAF (DL)とOsETTIN2 (OsETT2)遺伝子が重要な役割を果たしていることを明らかにした. 0sETT2は芒原基で発現するのに対して, DLは芒原基直下の組織で発現しすることから, 細胞非自律的に芒形成に関与すると考えられる. さらに, ジャポニカイネで芒が形成されない一つの原因は, OsETT2の芒原基での発現消失であることも示唆された.
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