2011 Fiscal Year Annual Research Report
茎頂及び根端メリステムの形成・維持・分化における二成分情報伝達系の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Plant regulatory systems that control developmental interactions between meristems and lateral organs |
Project/Area Number |
23012018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山篠 貴史 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (00314005)
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Keywords | 環境応答 / サイトカイニン / 二成分制御系 / 光情報伝達 / メリステム |
Research Abstract |
1%ショ糖を含むMS培地に、長日(16時間明/8時間暗)条件、短日(8時間明/16時間暗)条件で生育させたシロイヌナズナ芽生えのSAMの縦断面樹脂切片を作製し観察したところ、短日条件では長日条件に比べてSAMの細胞数が有意に低下していた。幹細胞ニッチマーカーであるWUS::GFPの発現も短日条件では低下していることが観察された。長日と短日では遺伝子発現のパターンも変化していることが知られているが、その制御の一部として、bHLH型転写因子PIF4/5が短日条件の暗期後半に活性化し、短日条件特異的な遺伝子発現を正に調節していることを明らかにした。(1)pif4/5二重変異体は短日条件においても形態的に長日条件とほぼ変化がない表現型を示したこと、(2)PIF4/5に依存してサイトカイニン分解酵素をコードする遺伝子が短日条件特異的に誘導されることを見いだしたので、長日と短日におけるメリステムサイズの変化もPIF4/5によって制御されている可能性を調べてみたが、pif4/5二重変異体のメリステムは野生株同様に短日条件で顕著にメリステムサイズが低下していた。今後、PIF4/5によって調節される植物ホルモンによる情報伝達が、植物の生長と分化にどのように関わっているかを明らかにする。また、メリステムの活性の可塑性に関しては栄養条件、光、ホルモンなど様々な要素が関与すると考えられるので、どのようなシグナル伝達によってメリステムの活性が調節されるかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、モデル植物シロイヌナズナに加えて、陸上基部植物であるヒメツリガネゴケの遺伝子破壊株の作製や有用マメ科植物であるミヤコグサの形質転換体の作製系を確立することができた。これを基盤に、来年度はメリステムの進化と多様性の観点からも研究が遂行できると考えている。また、サイトカイニン情報伝達系を異常にした植物体を作製しており、これらを用いてメリステムを構成する細胞群を組織学的に観察することでサイトカイニン情報伝達とメリステムの活性調節に関して知見が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
サイトカイニンシグナルはその受容体であるヒスチジンキナーゼAHKからレスポンスレギュレーターとして機能するB型ARRへと二成分制御系を介して伝達されることが知られている。シロイヌナズナにおいてB型ARRは11種同定されているが、ARR1,ARR10,ARR12を同時に欠損させるだけでサイトカイニン非感受性となりメリステムの分裂活性が著しく低下することが報告されている。逆に、ARR1,ARR10,ARR12のうちいずれか一つの機能が正常であれば、野生株と同様の表現型にまで回復する。このことは、ARR1,ARR10,ARR12は機能が重複しており、これらのいずれかをarr1/10/12三重変異体で発現させるとメリステムの分裂活性を正常にもどすことができると考えられる。メリステム内での発現させる部位や期間を限定することで、サイトカイニン情報伝達のメリステムにおける空間的役割やメリステム活性の可塑性に関して知見を得ることができると期待される。幹細胞ニッチにおけるサイトカイニン情報伝達の重要性を前提に考えれば、B型ARRの中でもARR1,ARR10,ARR12 mRNAは特に幹細胞ニッチ領域で強い発現が観察される可能性も期待される。これらの解析から、幹細胞ニッチに特異的なサイトカイニン情報伝達がSAMの活性維持にどの程度重要なのか、SAM内のサイトカイニン高感受性領域はどのような仕組みによって決定づけられているのかを明らかにする。
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