2011 Fiscal Year Annual Research Report
メリステム発生と生長相制御機構の比較ゲノム解析
Publicly Offered Research
Project Area | Plant regulatory systems that control developmental interactions between meristems and lateral organs |
Project/Area Number |
23012025
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河内 孝之 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40202056)
|
Keywords | オーキシン / 光応答 / 植物発生 / メリステム / 陸上植物進化 / 植物ホルモン / 環境適応 / 可塑性 |
Research Abstract |
メリステムの維持と機能変換は植物の可塑的な発生および環境応答の基本をなす。我々は、多細胞体制における環境情報と内的発生プログラムが統合される過程の解明を目指している。この課題に新たな切り口として陸上植物の進化的変遷を辿ることを取り入れた。材料としてゲノム解析が進み遺伝子解析手法の基盤が確立しつつある基部陸上植物苔類ゼニゴケを用いた。ゼニゴケは細胞の分裂や分化に光が必須である。昨年までに光合成産物ではなくフィトクロムを介した信号が重要であることを示していた。今年度は細胞周期の制御因子に注目した。ゼニゴケはサイクリンやサイクリン依存キナーゼの分子の遺伝的冗長性が極めて低かった。サイクリンD遺伝子の転写は、赤色光によって迅速に誘導され、フィトクロム依存的であった。これに対して、サイクリンBの発現は、サイクリンDの活性化による細胞周期の進行に依存して誘導されていた。植物個体を統御する内的因子としてオーキシンに注目した。T-DNAタギングによるオーキシン低感受性変異体分離を進め、遺伝子同定を行った。10系統分離したなかには、オーキシン依存的な転写活性化型転写因子と予想されるARF1遺伝子を破壊している系統が独立に2系統同定された。また、表現型はターゲティングによる遺伝子破壊と相補性検定によっても確認された。他に従来オーキシンとの関連が明らかでなかったキナーゼやその他の酵素遺伝子の変異体も同定された。なかにはシロイヌナズナオルソログ変異体の形態的な表現型の関連が見られるものもあり、進化的な観点からも興味深い結果を得た。成長相転換に関する研究では、概日時計の中心因子や出力因子を同定し、遺伝子破壊を行った。出力因子の破壊は成長相転換が引き起こされないといった表現型を示した。メリステム研究に進化軸を取り入れた研究が極めて有効であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
順遺伝学的な手法を用いた解析が期待以上に進展した。T-DNAタギングが変異体の分離と遺伝子同定に極めて有効な手法であることがわかったは意義深い。また、オーキシンとの関連が予想され、表現型が理解可能なものが着実に単離されたことに加えて、まったく新規な遺伝子も単離同定できたことは、苔類ゼニゴケをモデルとして研究を進めることの正当性を支持するものであった。相同組換えを利用した遺伝子破壊が実用ツールとなったことにより、研究も大幅に迅速かつ明瞭な結果が得られるようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
赤色光による細胞分裂制御に関しては、サイクリンD遺伝子の転写制御とフィトクロム遺伝子の関係に集中して解析する。オーキシンによる発生制御の進化的考察に関しては、単離した突然変異体の表現型の観察を進める。また、同定した原因遺伝子とオーキシン低感受性表現型との関連を、オーキシン信号伝達のモデルのなかに組み入れて考察する。
|
Research Products
(10 results)