2011 Fiscal Year Annual Research Report
花成を制御するフィトクロムBのシグナル伝達機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Plant regulatory systems that control developmental interactions between meristems and lateral organs |
Project/Area Number |
23012033
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松下 智直 九州大学, 大学院・農学研究院, 特任准教授 (20464399)
|
Keywords | フィトクロム / 植物 / 光受容体 / シグナル伝達 / 花成 / 環境応答 |
Research Abstract |
フィトクロムは、PIFと呼ばれるbHLH型転写因子のタンパク分解を光依存的に引き起こすことで、標的遺伝子の転写量を変化させ、光応答を引き起こすと考えられている。しかしながら我々は本年度、フィトクロムが、転写制御とは別の標的遺伝子に対して、選択的スプライシング制御を赤色光依存的に行うことを発見した。 我々はまず、フィトクロムと重複した機能を持つクリプトクロムの欠損株背景で作製した約25万系統のアクチベーションタギングラインに対し、大規模な変異体スクリーニングを行い、phyB制御下にある光応答が全て低下したrrc1変異体を単離した。そしてその原因遺伝子は、高等真核生物において選択的スプライシングに重要な役割を果たすSR蛋白質をコードしていた。 本年度はまず、RRC1のC末端にあるRSドメインが欠損することにより、phyBシグナル伝達の特異的な低下と共に、RRC1以外のSR蛋白質遺伝子のスプライシング異常が引き起こされることを明らかにした。さらに、いくつかのSR蛋白質遺伝子の選択的スプライシングが赤色光に応答して一過的に変化すること、そしてこの赤色光依存的なスプライシング変化が、phyB変異体とRSドメインを欠損するrrc1変異体のいずれにおいても同様に低下することを見出した。これらの結果から、phyBがRRC1のRSドメインを介して選択的スプライシングを制御することにより光形態形成を引き起こすことが示唆された。このことを確かめるために、次世代シーケンサーを用いたmRNA-seq解析を行い、phyBによる選択的スプライシング制御の標的遺伝子をシロイヌナズナにおいて網羅的に解析した。その結果、phyBが、その他のフィトクロム分子種と協調して働くことで、転写制御とは異なる標的遺伝子に対して、赤色光の照射量に依存して選択的スプライシング制御を行うことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書にて、「phyBシグナルによるSR様蛋白質を介した選択的スプライシング制御の標的遺伝子を網羅的に同定する目的で、次世代シーケンサーを用いたmRNA-seq解析を進める。」と記載した。そして本年度、計画通りにmRNA-seq解析を進め、phyBの選択的スプライシング制御の標的遺伝子を同定し、それらが、phyBによる転写制御の標的とは基本的に異なることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、まず、phyBによる2つの制御機構である転写制御と選択的スプライシング制御の間の関係について解析する。そして、phyBによる選択的スプライシング制御の生理学的意義について、特定の標的遺伝子を具体例に挙げ、明らかにする。さらに、phyBによるRRC1を介した選択的スプライシング制御機構について、特にphyBシグナルがRRC1のRSドメインに入力される分子機構について焦点を絞り、分子生物学的・生化学的解析を進める。
|