2011 Fiscal Year Annual Research Report
成熟卵母細胞形成に必須の翻訳制御機構解析
Publicly Offered Research
Project Area | The germline: its developmental cycle and epigenome network |
Project/Area Number |
23013001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小谷 友也 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (70419852)
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Keywords | 卵母細胞 / 卵成熟 / 翻訳 / RNA顆粒 / サイクリンB1 |
Research Abstract |
すべての動物の卵母細胞は、第一減数分裂前期で分裂を停止しmRNAと蛋白質を蓄積する。十分に成長した卵母細胞(未成熟卵)はホルモン刺激を受けて卵成熟を起こし、減数分裂の再開と第二分裂中期での再停止を経て受精可能な成熟卵となる。卵成熟の開始にともない遺伝子の転写は抑制されるため、成熟卵となるすべての現象は卵母細胞に蓄積されたmRNAと蛋白質の修飾で制御される。サイクリンB1蛋白質は、卵成熟を推進する卵成熟促進因子(MPF)の調節サブユニットで、その翻訳は正常な卵成熟の進行に必須である。本研究において、我々はゼブラフィッシュとマウス卵母細胞を用いサイクリンB1 mRNAの翻訳制御機構を解析し、次の結果を得た。(1)ゼブラフィッシュとマウスの未成熟卵において、翻訳が抑制されたサイクリンB1 mRNAはRNA顆粒を形成する。(2)これらRNA顆粒は、卵成熟過程で翻訳の活性化に伴って消失する。(3)マウスおよびゼブラフィッシュ・Pumilio蛋白質は、アフリカツメガエル・Pumilio蛋白質と同様にサイクリンB1 mRNAに結合する。(4)Pumilio蛋白質が結合できないレポーターmRNAは、RNA顆粒を形成せず、その翻訳の活性化時期が早まる。(5)サイクリンB1 mRNAの顆粒形成はアクチン繊維に依存する。(6)顆粒を形成しない内在のmRNAはその翻訳時期が早まる。これらの結果から、RNA顆粒形成がサイクリンB1の翻訳に重要であること、及び、その翻訳機構が種を越えて保存されていることが示唆された。これらの成果は、成熟卵形成に必須のサイクリンB1翻訳機構の新規分子機構を明らかにしたのみでなく、RNA顆粒の形成が翻訳の活性化時期の制御に関わることを初めて示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)成熟卵形成におけるサイクリンB1翻訳の新規分子機構の解明、さらに(2)その機構の普遍性の解明を目的とする。現在までに、RNA顆粒形成による翻訳の新規分子機構を見いだすことに成功し、その分子機構がゼブラフィッシュとマウスで保存されていることを示唆する結果を得ている。したがって、当初の目的のいずれに対しても十分な成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、サイクリンB1 mRNAが顆粒を形成し翻訳制御を受けること、その機構がゼブラフィッシュとマウスで保存されていることが明らかとなった。しかしながら、顆粒形成の分子機構、及び卵母細胞内での存在様式の詳細には迫っていない。今後、サイクリンB1 RNA顆粒形成の分子機構の解析と、電子顕微鏡を用いたRNA顆粒の微細構造とその変化の解析を推進し、普遍的な翻訳制御機構の実態解明に迫る。
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