2011 Fiscal Year Annual Research Report
始原生殖細胞におけるエピゲノムリプログラミングが保証する生命機能の同定
Publicly Offered Research
Project Area | The germline: its developmental cycle and epigenome network |
Project/Area Number |
23013021
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
関 由行 関西学院大学, 理工学部, 専任講師 (20435655)
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Keywords | 発生・再生 / エピゲノム / 生殖細胞 |
Research Abstract |
細胞の運命は、DNAやヒストンと呼ばれるタンパク質の化学修飾(エピゲノム)により決定・維持される。精子・卵子のもとになる始原生殖細胞ではゲノム全体のエピゲノム情報が初期化されるが、その詳細な分子機構及び生理的役割は良く分かっていなかった。 本研究では、始原生殖細胞特異的なエピゲノムネットワークを制御する分子基盤を同定し、ES細胞で再構築および始原生殖細胞で破綻させることで、エピゲノムネットワークが保証する生命機能の同定を試みた。始原生殖細胞特異的に発現し、かつ初期分化に必須の因子であるPRDM14をES細胞に高発現させ、遺伝子発現変化をマイクロアレイで解析した結果、生殖細胞特異的遺伝群の発現誘導が観察された。発現誘導が観察された生殖細胞特異的遺伝群の多くはDNAメチル化酵素であるDnmts TKO ES細胞でも発現誘導が観察されたことから、PRDM14がDNA脱メチル化を介して生殖細胞特異的遺伝群の発現誘導を保証していることが示唆された。次にPRDM14によるDNA脱メチル化機構を解明するために、5-メチルシトシン(5mC)の酸化酵素であるTET1との機能的及び物理的相互作用の検討を行った結果、PRDM14とTET1の物理的かつ機能的な相互作用の存在が確認できた。また、PRDM14によるDNA脱メチル化は塩基除去修復阻害剤で抑制されたことから、PRDM14がTET1による5mCから5hmCへの変換を促進し、塩基除去修復経路を介して能動的に脱メチル化を誘導していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、PRDM14がDnmt3bの転写を抑制することでDNA脱メチル化を誘導していると予想していたが、その後の解析の結果PRDM14はDnmt3bの抑制だけではなくTET1を介した能動的脱メチル化に関与していることが分かり、さらなる研究の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、PRDM14がどのような分子機構でTET1-塩基除去修復経路を活性化しているのか検証する必要がある。また、始原生殖細胞特異的なエピゲノムネットワークを破綻させる系をin vivoの解析だけではなく、ES細胞から始原生殖細胞への分化誘導系を用いたin vitroの解析も同様に行う予定である。具体的にはES細胞にDnmt3b,Glp,Uhrf1を高発現させた細胞を樹立し、それらの細胞を用いて始原生殖細胞へ分化させ、その影響を解析する。
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Research Products
(5 results)