2011 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の旧石器時代石器群における石器接合資料分析をもとにした学習行動の復元
Publicly Offered Research
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
23101501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 純 北海道大学, 文学研究科, 助教 (30344534)
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Keywords | 先史考古学 / 学習 / 石器 |
Research Abstract |
本研究では、北海道東部の白滝遺跡群から得られた石刃・細石刃剥離にかかわる後期旧石器時代の接合資料を対象として、接合資料をもたらした割り手の技量差の判定を試み、それに基づいて技術の学習過程を明らかにすることを目指した。取り組んだ研究項目として第一に、石器製作にかかわる技量差を接合資料の分析からどのように判定するのかという方法論的課題について、国内外の関連する既存の諸研究を集成し、問題点の確認をおこなった。その結果、石器製作が執り行われたコンテクスト、とくに石器製作作業の目的や石器石材環境からの影響が、技量差の判定基準に具体的にどのような影響を与えるのかが重要な問題であることが判明した。コンテクストに応じた技量差の発現形態についてモデルを構築し、それによって議論の進展が可能になるという見通しが得られることになった。第二の研究項目として、旧白滝15遺跡出土の接合資料に関して詳細な分析をおこない、接合資料をもたらした割り手が同一・一貫しているのか、割り手の交替が起こっていたならば、どのような状況でそれが生じていたのか明らかにしようとした。技術的諸特徴の分析を一回の打ち割り作業ごとに実施し、それが時系列でどのように連鎖しているのかを解明していった。その結果、石刃や舟底形石器を製作している接合資料において割り手の交替が起こっていたことが推定されるものがあり、それは上級者→初級者への交替を示唆するものであることを突き止めた。このことは、初心者の練習用の材料として、上級者の剥離作業の産物が利用されていた可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究作業の進行過程で新たな問題が発生し、新たな研究対象を設定する必要性が生じたため、繰越をおこなったが、その結果として、目標としていた資料の分析はすべて終えるとともに、問題の解決もはかることができた。研究成果になついては国際的な学会で発表し、また国際誌への投稿の純後も進めている。以上から、当初の研究目的はほぼ達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究成果を人類学をはじめとする関連諸分野の成果と突き合わせ、人類の学習史を総合的な視野から再構築することが今後の課題である。
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