2011 Fiscal Year Annual Research Report
投擲運動の学習プロセスの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
23101504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日暮 泰男 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (90580283)
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Keywords | 進化 / 人類学 / 脳・神経 / 実験考古学 |
Research Abstract |
本研究は、現在の人類と同じく過去の人類にとっても重要であったと推測される全身動作として投擲運動をとりあげて、とくに槍をもちいた投擲運動の学習・熟練プロセスの解明を目的として計画した。さらに、研究の進展にともなって、ネアンデルタールとサピエンスとの投擲をともなう狩猟技術の違いを調べることも目的にふくめることとした。2011年度の到達目標は、これらの研究目的のために有効な実験デザインを確立することであった。研究内容は文献調査と運動実験の2種類に大別される。 (1)文献調査。第一に、シェーニンゲンの木槍の写真図版、実測図、寸法・素材などにかんする記載のある文献を集めた。第二に、手投げの槍投槍器、弓矢といった考古学の対象ともなりうる投擲タイプの狩猟具について、その有効射程を民族学的な知見をもとに検討している文献を調べた。 (2)運動実験。槍投げ未経験者を対象とした予備的な動作解析をおこなった。この予備的分析の第一の目的は、槍投げが未経験者にとってどのていど困難なものなのかを理解することであった。この他にも、集中して分析するべき身体部位の探索や投擲運動の動作解析への使用に適した撮影機材の検討も目的とした。実験に参加した1名の対象者は10回の試技中1回も10メートルの先のターゲットに槍を命中させられなかった。この予備的分析から、槍投げは槍の飛行軌跡の制御とターゲットへの貫通に有効な槍の姿勢角の制御を同時に求めちれる未経験者にとって困難な運動課題であることがわかった。槍をターゲットに命中させることには直接結びつかなかったものの、対象者は10回という短い試技の間に手首の角度や槍のグリップを試行錯誤しており、今後は手の細かい動きにスポットをあてた計測と分析を実施するのも有意義と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度のはじめに設定した1年間の到達目標は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は科学研究費補助金・新学術領域研究「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」の公募研究である。この交替劇プロジェクトが取りくむ「ネアンデルタールとサピエンスの交替劇」「学習」という2つの大きなテーマのうち、本研究課題は「学習」に注目して研究を進めてきたが、「交替劇」への寄与を意識した計画も加えたほうが、より意義ある研究になるとのアドバイスをもらった。今後は、サピエンス以外の人類の時代には発見されていない投槍器について、動作解析をおもな研究手法として引き続き採用するとともに、民族資料標本の検討を合わせておこないたい。
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