2011 Fiscal Year Annual Research Report
頭蓋形態から脳区分を推測するための指標の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
23101509
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
小林 靖 防衛医科大学校, 医学教育部専門課程, 教授 (00195819)
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Keywords | 人類学 / 神経科学 / 解剖学 / 脳・神経 / 大脳皮質 |
Research Abstract |
本研究では旧人の脳形態を復元して現生人との相違を明らかにするために、ヒトを含む現生霊長類において頭蓋と脳の形態的相関を解析し、脳区分を知るための頭蓋の指標を選定する。2年間の期間内に、(1)解剖実習用人体マクロ標本、(2)防衛医科大学校病院の臨床放射線画像、(3)カニクイザルの頭部標本を用いた解析を計画している。 (1)についてはこれまでに40例余の遺体で頭蓋エンドキャストを作成し、脳標本との照合を行った。ただし詳細な解析は今後実施する。 (2)については平成23年度に防衛医科大学校倫理委員会の承認を得て、小児2例、成人2例の予備的な解析を始めることができた。 (3)は当初2年目に実施する予定であったが、平成23年9月に杏林大学よりカニクイザル5頭の提供を受けることができ、CT計測ならびに内部の脳の写真記録と組織切片作成を行うことができた。その結果カニクイザルでは、(3a)冠状縫合の下半と弓状溝下脚(ヒトの中心前溝下半に相当)の位置が、非常に良く相関するという所見が得られた。また、(3b)頭蓋冠内面の凹凸が大脳表面の脳溝と脳回によく一致することも明らかになった。 (3b)の所見がカニクイザルという種に特有の性質なのか、髄膜等の薄い小型の頭蓋の特徴なのかを検討するため、23年度は計画外の研究として、 (4)幼児の頭蓋骨標本(教育用)のCT計測も試みた。その結果、推定年齢2-3歳の頭蓋では、エンドキャストから前頭葉外側面、側頭葉外側面の脳溝の同定がある程度可能であるという所見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の欄に記載した(1)は計画の80%、(2)は70%程度の進捗であったが、(3)は24年度実施予定の内容を前倒しで実施し、(4)は新たに追加して研究を実施することができた。すなわち、23年度に計画されていた内容は予定よりもやや遅れているが、24年度実施予定の内容を前倒しで実現できたこと、当初の計画以外の内容も追加して実施できたことから、全体としておおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ研究の進捗状況は順調であるので、前述の4項目をさらに拡充して実施する予定である。23年度に使用したカニクイザルは杏林大学より無償で提供を受けたが、生きた個体を購入するのは非常に高価であるので、この点をどう解決するかは課題である。また、医療放射線画像の解析には、著しい病変の見つからなかった症例を使用する必要があるが、そうした症例、とくに若年個体ではX線の被曝のリスクを避ける必要があるため、高精細な画像を得ることができない。被爆の問題のない骨標本での解析と組み合わせてこの点を解決する必要がある。
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Research Products
(11 results)