2011 Fiscal Year Annual Research Report
応力誘起相変態を利用したバルクナノメタルの創製と物性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
23102503
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金 へよん 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20333841)
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Keywords | バルクナノメタル / チタン合金 / 変形双晶 / マルテンサイト |
Research Abstract |
生体用機能性材料として注目を浴びているチタン合金を用い、冷間加工によるナノ組織化の発現条件や発現機構を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、Ti-Nb、Ti-Zr-Nbの2元合金および3元合金を対象にし、冷間圧延による組織変化を系統的に調べた。相安定性(マルテンサイト変態温度)およびマルテンサイト相の結晶構造が変形組織に及ぼす影響を調べた。マルテンサイト変態温度は、高感度示差走査熱量計および一定応力下での熱サイクル試験により求めた。ZrおよびNb濃度を調節することで、マルテンサイト変態温度とマルテンサイトの結晶構造が制御できた。様々な組成の合金を用い、冷間加工時の組織発達過程を透過型電子顕微鏡、X線回折測定により調べ、バルクナノ組織が発現する組成範囲を調べた。例えば、Ti-Nb二元合金の場合はNb濃度が20at.%以下の組成で冷間圧延により結晶粒の微細化が起きたが、Nb濃度が21~25at.%の組成ではマルテンサイト相で加工されたにも関わらず結晶粒の微細化は起きなかった。一方、Ti-18Zr-Nb三元合金の場合は、Nb濃度が16at%以下の組成でナノ組織化が起きた。さらに、バルクナノ組織発現条件とマルテンサイト変態温度および結晶構造との関連性を明らかにした。その結果、Ti-Nb系合金における冷間加工によるナノ組織の発現条件を明らかにすることができた。Ti-Nb合金およびTi-Nb-Zr合金において冷間圧延によるナノ結晶化のためには、マルテンサイト相で加工されること、またマルテンサイト相の塑性変形が変形双晶により起きることが必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、冷間加工によるナノ組織化の発現条件や発現機構を明らかにすることおよびその物性を明らかにすることである。本年度ではTi-Nb,Ti-Zr-Nbの二元合金および三元合金を対象にし、冷間圧延による組織変化を系統的に調べ、相安定性(マルテンサイト変態温度)およびマルテンサイト相の結晶構造が変形組織に及ぼす影響を明らかにした。その結果、冷間圧延によるナノ結晶化の発現条件を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度で見出したチタン合金バルクナノメタルの基礎物性および機能発現についても調べる。まず、チタン合金バルクナノメタルのマルテンサイト変態、超弾性(ゴム弾性)特性を示差走査熱量計、X線回折測定、TEM観察、電気抵抗測定などの様々な手法で調べる。次に、ヤング率、熱膨張率などの基礎特性についても研究を行い、ナノ組織とその物性との関連性を解明し、バルクナノメタルの新機能発現を目指す。
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