2011 Fiscal Year Annual Research Report
オーステナイト系ステンレス鋼バルクナノメタルの強度と延性,耐水素疲労特性の両立
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
23102507
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
峯 洋二 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (90372755)
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Keywords | ナノ材料 / 水素 / 構造・機能材料 / 機械材料・材料力学 / 格子欠陥 |
Research Abstract |
本研究の目的は,耐水素高強度材料の開発にバルクナノメタル技術を適用することである.金属組織学的評価と変形および疲労挙動に及ぼす水素の影響の解析を組み合わせて,材料強化機構を支配する各種格子欠陥と水素の相互関係を明らかにする.また,従来のオーステナイト鋼の水素脆化で有害視されていた加工誘起マルテンサイトを積極的に利用することで,耐水素高強度材料の開発を目指す.本年度は,バルクナノオーステナイト鋼の疲労挙動に及ぼす水素の影響と加工誘起マルテンサイト(bcc相)の導入による水素脆性への影響の理解に向けて,以下の2項目の研究を実施した.(1)疲労挙動においては,局所的な水素の不均一分布が問題となり,材料中での水素の挙動を正確に把握することが重要である.安定オーステナイト鋼であるSUS310S鋼と析出硬化型のSUH660鋼についてHPT(high-pressure torsion)加工と焼鈍により組織を調整し,昇温脱離水素分析(TDS)と金属組織学的解析により,水素の挙動を明らかにした.ナノメタルオーステナイト鋼では,結晶粒界を経路とした短回路拡散が起こる.強化機構に寄与する析出物の水素トラッピングは,構成元素との水素親和性に強く依存する.(2)金属材料の水素脆化感受性は結晶構造によって大きく異なる.巨大ひずみ加工を受けたbcc相の水素脆化に及ぼす影響を明らかにするため,HPT加工と焼鈍により組織を調整したFe-0.01Cの水素脆化挙動を調べた.転位および小角粒界を大量に含む場合,水素によるき裂感受性が高まるが,適温での焼鈍により超微細粒構造を保持し,転位および小角粒界を有効に減少させることができる.また,HPT加工で作製した小型CT試験片の疲労試験を可能にする疲労挙動観察システムを導入し,疲労き裂進展の様子を連続的に観察できるシステムを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疲労の水素脆化機構の理解に重要な水素の挙動について,バルクナノメタルの特徴である高密度の格子欠陥および結晶粒界の役割を明らかにすることができた.また,純鉄を加工によって形成されるマルテンサイトに見立てて水素脆化挙動を調べ,マルテンサイト相が混在していても耐水素特性を改善できる可能性を示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,非接触3次元表面粗さ測定機を追加導入し,疲労過程をメゾスコピックスケールで観察できるシステムを構築する.これを用いて疲労き裂先端での変形に及ぼす水素の影響を明らかにする.電子線後方散乱回折(EBSD)解析など金属組織学的評価との組み合わせにより,水素が関与した疲労き裂進展機構におけるマルテンサイトの役割とき裂先端塑性における粒界すべりの関与を明らかにする.
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