Research Abstract |
本研究は,従来の電気抵抗率測定で用いられていたCd標準電池や直流電位差計を使用せず,金属材料の電気抵抗率を超精密に測定できるシステムを構築すること,ならびに,その測定により,巨大ひずみ加工された材料中の格子欠陥や集合組織を評価することを目的とした。 高精度のデジタルマルチメータ(YOKOGAWA 1281),電流源(YOKOGAWA 2561),標準抵抗(YOKOGAWA 2192,10mΩ)を用い,手動で極性変換を行うことで電気抵抗率の精密測定を行った。室温での測定は,従来,風防ボックス中で行っていたが,300Kに保持したポリジメチルシロキサン構造のシリコーンオイル中で行うよう方法を改良した。従来法では最大1.2Kの温度変動があり,それに起因する電気抵抗率の変動があったが,それらを除去することができた。このような測定系を使用し,以下のTi,Ti合金の電気抵抗率を測定した。 (1)HPT加工したTi-13Cr-1Fe-3Al合金 Ti-13Cr-1Fe-3Al合金に圧力5GPa,回転速度0.2rpm,回転数1,5,10の条件でHPT加工を行い,液体窒素温度と室温で電気抵抗率を測定した。HPT加工に伴う転位密度,非熱的ωの最大体積率,生成開始・終了温度の変化を分離して捉えることができた。 (2)冷間圧延された工業用純チタン 70%までの冷間圧延(CR)と6サイクルまでの繰り返し接合圧延(ARB)を行い,77Kと300Kで電気抵抗率を測定した。マティーセンプロットを作成すると,CRとARBでそれぞれ良い直線性を示した。ARBのその関係はCRの関係の延長線上にこないことが明らかになった。 また,次年度に行う電気抵抗率の動的測定に向け,装置(AC&DC電源+ナノボルトメータ:6221/2182A/J)の選定と測定条件の絞り込みも行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず,電気抵抗率の動的測定も可能な新たな装置を構築する。その装置を用い,静的条件下で従来と同等,もしくはそれ以上の精度を得る方法を見出す。引張変形中の電気抵抗率測定を行うため,試験機本体と試料を完全に電気的絶縁されたつかみ部を設計・作製する。本年度に作成したマティーセンプロットの信頼性を向上させると共に,このデータを利用し,引張変形中の電気抵抗率変化を可能な限り正確に推定し,格子欠陥の振る舞いをその場観察する。
|